...」と言うとともに、恩地喜多八は疲れた状(さま)して、先刻(さっき)からその裾に、大きく何やら踞(うずく)まった、形のない、ものの影を、腰掛くるよう、取って引敷(ひっし)くがごとくにした...
泉鏡花 「歌行燈」
...もう形のない死神と亡靈との並んで通つてゐるのが人間界のものに見えないやうなものだ...
岩野泡鳴 「泡鳴五部作」
...ぼくの売り物は形のない知恵なんだから...
江戸川乱歩 「影男」
...左の耳が殆んど形のないまでに潰されていた...
大阪圭吉 「坑鬼」
...形のない形が見えるのです...
高神覚昇 「般若心経講義」
...したがって五蘊(うん)とは、要するに、形のあるものと、形のないもの、すなわち有形の物質と、無形の精神との集合(あつまり)を意味するもので、仏教的にいえば「色」と「心」、つまり色心の二法となるわけです...
高神覚昇 「般若心経講義」
...なんといっても形のない心よりも...
高神覚昇 「般若心経講義」
...一方では形のないただの観念や観念傾向やを世間では考えたがるかも知れないし...
戸坂潤 「思想としての文学」
...もしくは形のない或る一種の世の中の空気として実感される...
戸坂潤 「一九三七年を送る日本」
...しかし幼年期の、形のない、あの漠然とした恐怖の記憶は、今も朦朧と、しかし確かに残っている...
外村繁 「澪標」
...形のない見馴れない奇怪なものが...
豊島与志雄 「道連」
...しかしそれは捕えんとすれば跡形のないものである...
中谷宇吉郎 「古代東洋への郷愁」
...形のない粘土を用意していて...
平林初之輔 「華やかな罪過」
...亭主(ていし)持たずに一生暮すもんが有る者(もん)かネ」これは万更(まんざら)形のないお噺(はなし)でもない...
二葉亭四迷 「浮雲」
...あたくしは思想なんて形のないものは...
宮本百合子 「傷だらけの足」
...また婦人たちはたった独りでもなるほど形のない肉の塊やかけらを産み出しはするが...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...人間の種子からまず母の胎内に形のない果実を生じ...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...そうすれば形のない物よりはるかに消えやすい...
柳田国男 「雪国の春」
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