...火を弄ぶものは、気をつけないと――」尊は皺(しわ)だらけな顔に苦笑を浮べて、今はさらに拡がったらしい火の手を遥に眺めながら、黙って震(ふる)えている姪(めい)の髪を劬(いたわ)るように撫(な)でてやった...
芥川龍之介 「素戔嗚尊」
...鼠を弄ぶ猫の如く屡余の「生きむと欲する意志」を脅かして余が生に不安の影を落す...
阿部次郎 「三太郎の日記 第一」
...或る眞理と或る價値とを體得しない者がその眞理と價値とを口舌の上で弄ぶことである...
阿部次郎 「三太郎の日記 第一」
...強いと云ふ言葉を路傍の石のやうに輕易に弄ぶ野次馬の輩と同樣の滑稽に陷る...
阿部次郎 「三太郎の日記 第一」
...物を弄ぶのはその物の真髄を知らないからである...
種田山頭火 「赤い壺(三)」
...学位論文式な観点から之を弄ぶことは全く無意味であるだけに...
戸坂潤 「イデオロギー概論」
...なか/\悪戯を弄ぶ人であるとの推測から来たのであらう...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...しろうとの女を弄ぶのは...
豊島与志雄 「傷痕の背景」
...ああいま春の夜の灯かげにちかくうれしくも屍蝋のからだを嗅ぎて弄ぶ...
萩原朔太郎 「定本青猫」
...必ずしも春一がはじめから小夜子を弄ぶ気であったとは主張しません...
浜尾四郎 「死者の権利」
...あんな好人物を弄ぶのはいい加減にしろ...
久生十蘭 「雪間」
...酔余(すいよ)或は花を弄ぶなど淫(ウカ)れに淫れながら...
福沢諭吉 「女大学評論」
...之を弄ぶは唯是れ一種の行楽事にして...
福沢諭吉 「新女大学」
...都(すべ)て父母の利心に生じて子を弄ぶものなれば...
福沢諭吉 「新女大学」
...弄ぶとは知らずに幼い建築を企てる子供のやうに...
水野仙子 「響」
...弄ぶでもなく、運ぶでもなくに運ばれた一つの物體が、どこかの果に漂ひ寄つたとしても、そこに人間の發見の目がなかつたならば、それは偶然とも言へないのである...
水野仙子 「夜の浪」
...けだしその推察通り宦者が婦女を弄ぶ例は尠なからぬ(タヴェルニエー『土耳古帝宮中新話(ヌーヴェル・リラチヨン・ド・ランテリユール・ジュ・セラユ)』一六七五年版二八頁...
南方熊楠 「十二支考」
...又專門審美家のうちにも粧飾語を弄ぶものあり...
森鴎外 「柵草紙の山房論文」
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