...於是、彼等は其長紳をき、其大冠を頂き、其管絃を奏で、其詩歌を弄び、沐猴にして冠するの滑稽を演じつつ、しかも彼者自身は揚々として天下の春に謳歌したり...
芥川龍之介 「木曾義仲論(東京府立第三中学校学友会誌)」
...俺は從來如何に淫蕩なる生活との接觸に當つても、異性を弄び、異性を「買ふ」事を卑しとする自分の良心を抂げなかつた...
阿部次郎 「三太郎の日記 第二」
...金銭を弄び下等の淫楽に耽るの外...
伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
...医者が薬を弄び、似非自然主義者が心を弄び、自殺しそくなつた人が狂言に自殺を再びやつて見るやうなものである...
田山録弥 「自からを信ぜよ」
...内山はパチンコの玉を掌の上に弄びながら...
豊島与志雄 「庶民生活」
...私たちはただ寝ころんで、空を眺め、海を眺め、煙草をふかし、雑談にふけり、鳥か魚かを珍らしがり、手で弄び、或は即席に料理して酒の肴にするのもよい...
豊島与志雄 「女人禁制」
...唄もうたえず洒落の才能もない僕は、杯を弄びながら、いきおい黙りこみがちだ...
豊島与志雄 「慾」
...いつも若い女の操(みさお)を弄び...
中里介山 「大菩薩峠」
...長火鉢の傍らに四十格好の脂肪肥りにでっぷりした丸髷を結った内儀が煙管を弄び乍ら悠然と控えて居るのが見え...
西尾正 「陳情書」
...同時に私はあなたの弄びものとなって居たのでした...
浜尾四郎 「悪魔の弟子」
...あはれに淋しき調べを弄びつゝ...
樋口一葉 「琴の音」
...人の感情を弄んで置きながら……誰が人の感情を弄びました……誰が人の感情を弄びましたよ」ト云った時はお勢もうるみ眼に成っていた...
二葉亭四迷 「浮雲」
...生前好んで尺八を弄びたるが...
水上瀧太郎 「貝殼追放」
...(この間小猿等大いなる丸(たま)を弄びゐたるが...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...両手で手紙を弄びながら...
夢野久作 「暗黒公使」
...紅茶を入れかけたままの白いエプロンの端を弄(もてあそ)び弄び耳まで赤くなってしまった...
夢野久作 「二重心臓」
...」勘次は安次の紫色に変っている指さきを弄びながらそう云うと...
横光利一 「南北」
...偉い方?』と女は私の髪を骨ばった指で弄びながら訊いた...
渡辺温 「ああ華族様だよ と私は嘘を吐くのであった」
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