...熱(あたた)かい接吻(きす)の音が幽かに三度(みたび)四度(よたび)鳴つた...
石川啄木 「鳥影」
...此處は東京だつたと思つて幽かに笑つた...
石川啄木 「天鵞絨」
...幽かに鼾(いびき)も聞えるだ...
泉鏡花 「海異記」
...その隙間から幽かな光りが漏れて来る...
江戸川乱歩 「吸血鬼」
...更に西に更に幽かに能登半島が見えました...
江南文三 「佐渡が島から」
...世人はこれを、雀大臣と呼んで、この出世も、かれの往年の雀に対する愛情の結実であるといふ工合ひに取沙汰したが、しかし、お爺さんは、そのやうなお世辞を聞く度毎に、幽かに苦笑して、「いや、女房のおかげです...
太宰治 「お伽草紙」
...あの孤独の戦慄がこれくらゐの小さい町にも既に幽かに忍びいつてゐる模様である...
太宰治 「津軽」
...幽かに笑うばかりだ...
太宰治 「東京八景」
...私の虚無に幽かな燭燈(ともし)がともった...
太宰治 「東京八景」
...幽かな溜息をもらしました...
太宰治 「人間失格」
...幽かに誇る気持もどこかにあった...
太宰治 「ろまん燈籠」
...それは私の心に或る幽かなゆとりを與へた...
南部修太郎 「疑惑」
...お前は幽かに頷いた...
南部修太郎 「疑惑」
...さめかけたとは云へまだ殘つてゐる幽かな醉心地が私をそそのかし始めたのも事實だつた...
南部修太郎 「ハルピンの一夜」
...いつもうつむき加減でひら/\とする両つの振袖を軽やかに胸の上に合せて土橋の上をゆきゝする姿が真に幽かな蕭寥たる一幅の絵巻ものと見えた...
牧野信一 「天狗洞食客記」
...幽かながら前代の歓喜を語るのである...
柳田国男 「雪国の春」
...死臭が幽かに鼻を打った...
横光利一 「旅愁」
...そしてまた幽かな音楽的笛音のことを――足跡を見た直後にどこか下の方から聞こえてきたような気がしたらしい――それは強風が吹く峰々の洞穴口から響いていた音に酷似していたにも拘らず...
H. P. ラヴクラフト H.P.Lovecraft The Creative CAT 訳 「狂気の山脈にて」
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