...すぐ川向うには例のおもちや屋...
高浜虚子 「落葉降る下にて」
...昔、娘の時分に父と泊っていた采女(うねめ)町の旅館と云うのも、つい川向うの、此処(ここ)から今も屋根が見えているあの歌舞伎座の前を這入った横丁にあったので、このあたりは全然知らない土地ではなく、ちょっと懐(なつか)しい気持もして、道玄坂とは一緒にならないが、でもあの頃には東京劇場とか演舞場とか云うようなものは建っていず、この川筋の景色も今とは可なり違っていた...
谷崎潤一郎 「細雪」
...つい川向うが釧路...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...最初は川向うの火事のような心持で眺めておりましたが...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...尾久の方からは、川向うの土手を、提灯が六つゆらりゆらりと練って行くのが見えるが、土手下の小台の方からは、たった一つもそんなものが見えなかったというから不思議じゃありませんか」「フーム、器用なことをするおコンコン様だね」「王子が近いから、いずれ装束稲荷(しょうぞくいなり)の眷族(けんぞく)が、千住あたりの同類へ嫁入するんだろうてえことでその晩は済んだが、驚いたことにそれから三日目の晩、また雨のショボショボ降る日、こんどは先のよりでっかい狐の嫁入があったんです」「どうしてでっかいと解った」「その時は提灯が倍の十二でさ、土手を十二の提灯が行儀よく練るのが川に映ってそりゃ綺麗でしたよ」「お前はそれを見ていたのかい」「あっしが見たのは三度目ので」「三度もあったのかい」「だからお話になりますよ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...川向うの尾久(をぐ)は祭のやうな騷ぎだつたさうですよ」「川向うが騷いで...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...川向うの人達に見付けられ度くないからだ」平次の繪解きは奇拔ですが...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...直ぐ樣川向うの百姓家へ行つて...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...川向うへ聴こえるほどわめいて居るではありませんか...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...その川向うは、すぐその沿岸まで、場末のさわがしい工場地帯が延びてきていた...
堀辰雄 「三つの挿話」
...噂に聞いた身分に似合(にあわ)しからぬ川向うのP町で...
松本泰 「緑衣の女」
...川向うへでも行って...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...浪人組を引率して川向うに姿を消したという聴き込みに...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...「おめえのうちは川向うだろう」「川向うも川向う...
山本周五郎 「へちまの木」
...お叱りになる声が川向うのお琴のお師匠さんの処までよく聞えたそうです...
夢野久作 「押絵の奇蹟」
...みな鳥影のごとく川向うへ逃げ失せましたそうな」「怯(おび)え立ったの」「北条も平家...
吉川英治 「私本太平記」
...その川向うの小橋在(おばせざい)に...
吉川英治 「鳴門秘帖」
...と尋ぬると二瀬川はツイこの川向うで...
若山牧水 「みなかみ紀行」
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