...島抜けの法印(ほういん)という...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...島抜けの法印は、婦女誘拐(ゆうかい)を職とする、法網くぐりの女衒(ぜげん)たちのために、仲宿をすることもあるので、女わらべの泣きごえが、世の中に洩れるのをはばかり、庫裡(くり)の下に窖(あなぐら)を掘って、そこに畳をしき込み、立派な密室を造っていた...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...二島抜けの法印、破(や)れ行灯(あんどん)の、赤黒い、鈍い灯火(あかり)の下に、大あぐら、古ぬの子から、毛深い胸を出して、たった一人、所在なさげに、白丁(はくちょう)から、欠茶碗に、冷酒をついでは、ごくりごくりと飲(や)っているが、もう一升徳利が一本、五合のが、二本目も尽きかけて来ているのだ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...島抜けの法印、厚い、紅い舌を出して、物ほしそうに、ぺろりと舌なめずりをして、――こうやって、たった一人、しょうことなしの独酌(どくしゃく)に、何のうめえ味がある――これが、美女(たぼ)のお酌と来てごろうじろ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...からかいに行ってやろうか――島抜け法印...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...島抜けの法印は、その方へ、赤濁った目を吸われたのを、さすがに反(そ)らして、白丁と一緒に持って来た、茶碗を突きつけた...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...ところで早速、一ぺえ献(さ)そう」「折角、御苦労をかけたのだから、遠慮なくいただこうかね」と、お初は、ほっそりとした手をのばして、厚ぼったい、茶呑茶碗に、なみなみと注がせて、一口呑んで、じっと、法印をみつめたが、「それにしても、人は見かけによらぬものッてネ――お坊さんなぞは、鮹(たこ)ざかなかなんかで、かどわかしの娘っ子でもさいなんでいそうに見えて、ほんとうに親切なところがあるわねえ」「当り木よ」と、法印、上機嫌で笑って、「人間が見たとこ通りなら、世の中に売僧(まいす)も毒婦もありゃあしねえわサ、おいらなんぞは、島抜けの何のと、世間では悪くいうが、本心は、どんな仏さまよりやさしいのだ」「え? 島抜け?」と、お初は、茶碗を持ったまま、大きな目で、法印を眺めた...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...「島抜けッて! お前さん...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...どいつもこいつも何てのろ助ばかりなんだろう――島抜け法印は...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...今日昼すぎになって一日一度は、見まわることにしている、鉄心庵――そこを覗(のぞ)いて見ると、何と、おどろいたことには庵中に人気は絶えてなく、窖(あなぐら)の揚蓋(あげぶた)も、あけッぱなしになっていて、さては、しまった、島抜け法印、見込んでまかせといたお初の色香にまよって、駆け落ちをしたのかと唇を噛んだが、よく調べると、首欠け阿弥陀仏の前に、置手紙が載っていて――親分、すまぬ、大切な預りもの、ちょいと気をゆるしたひまに、姿が無く、このままにては、生きて、男同士、お目にかかれぬ仕儀、これより草の根を分けてなりと、お初をたずねださねばならぬゆえ、二つあって足りぬ首をしばらくおかり申し、行方をたずねに出かけ申し候、おわびは、たずね出しての上、いかんとも究命に逢い申すべく候...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...島抜け法印だった...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...性懲(しょうこ)りのねえ奴等だ――」島抜け法印は...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...「おととい、来い」二一美しい娘を、折角連れ込んで来てくれた、言わば、福の神のようにも思われる、丑、為、二人を、島抜け法印、襟髪つかんでほうり出すのを見たとき、お三婆は、物すごい目つきをした...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...島抜けの法印さんというえらいお方が泊っているということを...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...悪いこたあしねえよ――」島抜け法印...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...「あの女(あま)、手をかえ、品をかえやがって、さもしおらしい娘ッ子が、恋に狂って飛び込んで来たもののように装いやがったのだな! 馬鹿め!」「冗、冗談じゃあねえ――親分――おらあ、あれから、あの女(あま)ッ子の行方(ゆくえ)をさがして、どうにかしておめえに詫びが入れてえと、夜の目も寝ずに、寒い寒い江戸の町を、それも、このおれが、大ッぴらにゃああるけねえおれが、ほッつきまわっている気持を知ってくれたら、おめえは、そんなにまで、いわねえだろうに――親分、そりゃあ、全く、思いちげえだ」と、島抜け法印、泣かんばかりのオロオロ声だ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...おめえはブマだ――島抜けが通っているなんて...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...島抜け法印のすがたは...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
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