...島抜け法印、いつもであれば、預かりものが、年はもいかぬ娘っ子なので気も張らぬが、今度は相手が相手、なかなか気苦労(きぼね)が折れるらしく、例の寝酒も、この四、五日はつつしんでいた...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...島抜けの法印、厚い、紅い舌を出して、物ほしそうに、ぺろりと舌なめずりをして、――こうやって、たった一人、しょうことなしの独酌(どくしゃく)に、何のうめえ味がある――これが、美女(たぼ)のお酌と来てごろうじろ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...三島抜け法印の、どんぐり目は、いよいよギラギラと、耀(きら)めいて来た...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...「島抜けッて! お前さん...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...その決心をすりゃあ、飲みつぶれても安心だろう」「へ、なるほどな、おまはんと、この窖で一緒に寝るか?」「手と手をつないでいりゃあ、逃げたくっても逃げられないよ」八いっそ、この窖(あなぐら)に落ちついて、飲み明す気になってくれたらどうだろうか――と、お初にねだられて、島抜け法印、なるほど、それは名案に相違ないと思った...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...世の中に、どんな珍景が多いにしろ、この酒盛ほど、めずらしいものは少ないだろう――しかも、場面が凄(すご)い筈(はず)なのに、すこしも凄惨(せいさん)さがなく、どことなく伸び伸びしているのは、島抜け法印の、持って生れた諧謔味(かいぎゃくみ)が、空気を和(なご)やかなものにしているせいであろう...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...「ほんとにサ、お前さんもいい加減に毛を伸ばしなさいよ――そうしたら世間の女が、うっちゃっちゃあ置かないがね」思い出したように、じっと見て言うお初の、色気のあること!九――ふうん、島抜け法印、いよいよべろべろになって行くよ――ざまあ見ろ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...どいつもこいつも何てのろ助ばかりなんだろう――島抜け法印は...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...今日昼すぎになって一日一度は、見まわることにしている、鉄心庵――そこを覗(のぞ)いて見ると、何と、おどろいたことには庵中に人気は絶えてなく、窖(あなぐら)の揚蓋(あげぶた)も、あけッぱなしになっていて、さては、しまった、島抜け法印、見込んでまかせといたお初の色香にまよって、駆け落ちをしたのかと唇を噛んだが、よく調べると、首欠け阿弥陀仏の前に、置手紙が載っていて――親分、すまぬ、大切な預りもの、ちょいと気をゆるしたひまに、姿が無く、このままにては、生きて、男同士、お目にかかれぬ仕儀、これより草の根を分けてなりと、お初をたずねださねばならぬゆえ、二つあって足りぬ首をしばらくおかり申し、行方をたずねに出かけ申し候、おわびは、たずね出しての上、いかんとも究命に逢い申すべく候...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...島抜けの! 許しておやりよ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...不向きな相手だ」二〇――島抜けの――と...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...性懲(しょうこ)りのねえ奴等だ――」島抜け法印は...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...「うむ、だが、あの娘御を、あのまま、ころがして置いたのでは――」と、島抜け法印、ぐったりと、のれん口にうつぶしのままに仆れている、砕かれた花のような浪路の方をかえりみた...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...悪いこたあしねえよ――」島抜け法印...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...「あの女(あま)、手をかえ、品をかえやがって、さもしおらしい娘ッ子が、恋に狂って飛び込んで来たもののように装いやがったのだな! 馬鹿め!」「冗、冗談じゃあねえ――親分――おらあ、あれから、あの女(あま)ッ子の行方(ゆくえ)をさがして、どうにかしておめえに詫びが入れてえと、夜の目も寝ずに、寒い寒い江戸の町を、それも、このおれが、大ッぴらにゃああるけねえおれが、ほッつきまわっている気持を知ってくれたら、おめえは、そんなにまで、いわねえだろうに――親分、そりゃあ、全く、思いちげえだ」と、島抜け法印、泣かんばかりのオロオロ声だ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...「それに、なあ、この世ってもなあ、だれに取っても、そんなに無理に、生きのびることもねえものじゃあねえか――生き伸びたって、苦しいばかりよ――な、法印、そうじゃあねえか――」「うむ、そう言やあ、そうだな?」と、島抜けが、うめくように呟いて、うなずいた...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...おめえはブマだ――島抜けが通っているなんて...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...島抜け法印のすがたは...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
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