...尤(もつと)も、面白いといつて笑つてしまへば簡単であるが、昔の日本人の西洋を伝へたのも、やはり同じくらゐ間違つてゐることを思へばあまりいい気になつて、西洋人ばかり笑つてゐられぬことは事実である...
芥川龍之介 「日本の女」
...尤も二階から屋根伝いに逃げる路はあるけれど...
江戸川乱歩 「D坂の殺人事件」
...尤も、そういう場合でも、同学者の間にはきっと、あの設備があるのに、あんな事ばかりやっている、といったような批評をするものの二、三人は必ずあるであろうが、そういう批評が耳に這入(はい)ったときに心を動かさないだけの「心の自由」がありさえすれば、何でもない...
寺田寅彦 「学問の自由」
...そこでは多少とも歴史性が忘れられ勝ちなのは尤もである...
戸坂潤 「現代哲学講話」
...尤(もっと)も慎むべきは此道也...
中里介山 「大菩薩峠」
...時間とを要します」「御尤(ごもっと)もです――では...
中里介山 「大菩薩峠」
...野茨の花の開く數日間が一年の内に於て尤も爽快で且つ四圍が不安の念を起させない時期である...
長塚節 「おふさ」
...尤(もっと)も其他...
夏目漱石 「正岡子規」
...「一々御尤も」「やるか...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...田地を取られた上、娘を賣つて、伜は家出したんだから、――尤も、松藏はその晩、練馬の弟のところへ法事に招ばれて泊る心算で出かけたが、氣分が惡くなつて途中から歸つたさうだ」「時刻は?」「出かけたのは薄暗くなつてから、尤(もつと)も――法事に行くなら、齋飯(とき)は向うで出るんだらう――と寅五郎に當てこすられて、空き腹を抱へて出かけたせゐか、途中で氣分が惡くなつて、半里ばかり行つて引返したといふから、半刻も家をあけなかつた筈だ」「成程ね」ガラツ八は高慢らしく腕を組みました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...證據などと、――尤も、お筆が生きてゐさへすれば、何も彼も一ぺんに判つてしまひますが」「そのお筆は何處へ行つた、此處へ伴れて來い...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...――尤も眠氣を拂ふために...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...その有難い書物にも妾を置いてはいけないと書いては無いかも知れぬ?」「鹽鮭と羽二重餅ですよ、親分」「お節介だな、お前は」「尤も、内儀の里江さんは石女(うまずめ)で、三十年連れ添つても子が無いからと、夫が若い妾を置いても、不足らしい顏もしない」「氣の毒だな」「鹽鮭見たいな親爺(おやぢ)の子をウジヤウジヤ拵(こしら)へたところで、世の中が薄汚くなるばかりぢやありませんか、ね、親分」八五郎の哲學は、此上もなく簡單です...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「見掛けさへすれば、有無を言はさず捉(つか)まへるが、薩張(さつぱり)見掛けない、――尤も、下女のお近は、姿は變つて居たが、あの女らしいのが、ウロウロして居るのを見たやうな氣がすると言つて居たよ」「いや有難う御座いました、改めて、下女からも訊くことにいたしませう」平次は瀧山誠之進に別れると、お勝手から下女のお近を誘ひ出しました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...――尤も近頃は隱居をして...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...尤も歴史的文化的生において他者性を代表する形象が根源としての實在的他者へ歸屬せしめられる場合には...
波多野精一 「時と永遠」
...君の親父は何か感違ひして、やがて俺の嫁にでもするのか、それでは境遇が違ひ過ぎるからなんて恐縮してゐるんだが、尤もな話だよ、冗談ぢやない、親父こそ自惚れだ、誰が八重となんか――...
牧野信一 「南風譜」
...尤(もっと)も高等中学に居る時分に演習に往つてモーゼル銃の空撃(からう)ちをやつたことがあるが...
正岡子規 「病牀六尺」
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