...いかにも寒々として可哀想であったので箪笥の引出を開いて...
海野十三 「棺桶の花嫁」
...寒々と彼方に屹立する富士の姿をなよやかな薄紫の腰のあたりまでひッたりとぼかしこむ...
大阪圭吉 「闖入者」
...心の裡が寒々としてきた」山田にも鉱毒問題に対する鬱憤の気持はよく察しられた...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...寒々と乾いた土の上に寝転んだまま...
薄田泣菫 「水仙の幻想」
...羽織もなく寒々とした黄色い顔の男や...
武田麟太郎 「釜ヶ崎」
...寒々と素袷(すあはせ)の襟をかき合せ...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...怖い」寒々と袖を合せて...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...常に寒々とした人生の孤独(アインザーム)を眺めていた...
萩原朔太郎 「郷愁の詩人 与謝蕪村」
...板壁と障子だけの簡單な造作で寒々としてゐたが...
林芙美子 「雨」
...こゝろの中に寒々とした風が吹きこんで来るような気がする...
林芙美子 「淪落」
...寒々とした墓地のなかに...
原民喜 「閑人」
...左手に寒々と光る陸奥浦の海が見えてきた...
久生十蘭 「ボニン島物語」
...妙な首実験の事並に電話の声の事寒々と広い警視庁捜査一課長室の大きな事務机を前にして...
久生十蘭 「魔都」
...入り悪く寒々としてるし...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...寒々と貧しく暮してゐる母親を想像したのが...
牧野信一 「裸虫抄」
...寒々と、ほろ苦くばかりある...
吉川英治 「新書太閤記」
...彼が、白峯へ登ったのも、やはり仁安三年の初冬だったから、ちょうど今、ぼくらが自動車を降りた場所のように、山蔭の中腹は、寒々として、満山の松風が、梢を鳴らしていたにちがいない...
吉川英治 「随筆 新平家」
...日のさゝぬ其處の紅葉は見るからに寒々として...
若山牧水 「みなかみ紀行」
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