...その後にできた掘立小屋のような柾葦(まさぶ)き家根の上にその建物は高々と聳(そび)えている...
有島武郎 「星座」
...僕の二階の家根(やね)を上までも越している...
岩野泡鳴 「耽溺」
...家根屋の持って来るような梯子(はしご)を伝って...
岩野泡鳴 「耽溺」
...夏には立ち並んだ瓦家根の上を通ってくる烈風が吹きつけた...
豊島与志雄 「過渡人」
...昔は田園だった低地の家根並の彼方...
豊島与志雄 「椎の木」
...不調和な色の瓦(かわら)でふいた家根...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...仔猫が庭の木に登ったり家根に上ったりすると...
豊島与志雄 「猫」
...家根(やね)の上(うえ)で歌(うた)っている鳥(とり)の声(こえ)を聞(き)くと...
グリム 中島孤島訳 「杜松の樹」
...左右の家の軒から家根(やね)へかけて...
夏目漱石 「門」
...堅固にして仆(たお)れざる如き家は家根を吹き飛ばされ...
シモン・ニューコム 黒岩涙香訳 「暗黒星」
...鴉毛の婦人やさしい鴉毛の婦人よわたしの家根裏の部屋にしのんできて麝香のなまめかしい匂ひをみたす貴女(あなた)はふしぎな夜鳥木製の椅子にさびしくとまつてその嘴(くちばし)は心臟(こころ)をついばみ瞳孔(ひとみ)はしづかな涙にあふれる夜鳥よこのせつない戀情はどこからくるかあなたの憂鬱なる衣裳をぬいで はや夜露の風に飛びされ...
萩原朔太郎 「青猫」
...記憶は雪のふる都會の夜にしづかな建築の家根を這ひまはるさびしい青猫の影の影記憶は分身のやうなものだ...
萩原朔太郎 「記憶」
...農夫海牛のやうな農夫よ田舍の家根には草が生え...
萩原朔太郎 「蝶を夢む」
...私はかなしい瞳をあげて、ときどき遠方の空を思ふのです、かしこに晴れたる青空あり、その下には無數の建築、無數の家根、遠く大東京の雜鬧はおほなみのやうな快よいひびきをたてて居るではないか、ああ心よいまはかがやく青空のかなたにのがれいでよ、そしてやすらかに安住の道をもとめてあるけよ、見知らぬ人間の群と入り混みたる建築の日影をもとめて、いつもその群集の保護の下にあれよ、ああ、わがこころはなになればかくもみじめな恐れにふるへ、いつも脱獄をしてきた囚徒のやうに、見も知らぬ群集の列をもとめてまぎれ歩かうとするのか、このふるへる、みすぼらしい鴉のやうな心よ、しきりに田舍の自然をおそれる青ざめたるそのひとつの感情よ、いまも私のかんがへてゐることは、盛りあがるやうな大東京の雜鬧と、そのあてもなき群集のながれゆくひとつの悲しき方角です...
萩原朔太郎 「都會と田舍」
...どうも母屋の家根がよく見えない土塀つづきだ...
長谷川時雨 「北京の生活」
...家家が白菊をもて葺く様に月幸ひす一村の上十二月の冬の月が武蔵野の葉を落した裸木と家根とを白く冷くしかし美しく照してゐる...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...米俵を家根へ運び出せ……」音無が夢中で駈け込んで来たのであつた...
牧野信一 「鬼の門」
...両側の町家残らず家根瓦を打ち落され...
武者金吉 「地震なまず」
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