...そこでこの機会に、この問題に対する私のほんとうの意見を述べて立場を明らかにしておきたいと思うのであるが、実のところ、私にとつて、近ごろこの問題ほどわかりにくい問題はない...
伊丹万作 「戦争責任者の問題」
...だが、実のところ、太陽の直射熱はいよいよはげしくなって、誰の咽喉(のど)もからからにかわいてくるのだった...
海野十三 「幽霊船の秘密」
...実のところ、わたしの主な仕事――それが仕事といえるなら――はわたし自身をわたしの諸条件の上に据(す)えて、天地間に起こるあらゆる事態に即応できるように常にしておくことです...
ソーロー Henry David Thoreau 神吉三郎訳 「森の生活――ウォールデン――」
...実のところはまだ心底から忘れ去っていたのではなかった...
谷崎潤一郎 「少将滋幹の母」
...実のところ僕はこんなつまらぬ話はあまりやりたくないのだ...
辻潤 「ふもれすく」
...実のところ、酒よりも、あの眼だ...
豊島与志雄 「憑きもの」
...冬の十勝行ももう旧い話で、実のところ、今ではもはや私たちの仲間の雪の研究の生活の中では、何も事新しい話ではない...
中谷宇吉郎 「雪後記」
...しかし実のところは...
中谷宇吉郎 「雪雑記」
...たくさん御覧なさればいいのに」「実のところはたくさん拝見しました」「それ御覧なさい...
夏目漱石 「草枕」
...自分は実のところ何にも知らないのである...
夏目漱石 「行人」
...実のところ話す張合もないんだが...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...実のところ万事はただ外面的なものでして...
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 「審判」
...毎朝、殊更らしい顰めっ面をして万年青の前に跼んでいるのは、実のところ、隠しても隠し切れぬ愁傷顔を娘や阿古十郎に見られ、弱り切った本心を覚られまいとする我慢の手管なのである...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...……あなたはなにもご存じないが、真実のところ、この仕事ではたしかにあなたの分(ぶ)が悪い...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...アングラスの陳述によれば、それにはいちいち至当な弁明がなされているので、そう言われれば、なるほどそういうわけだったのかと納得できるのだが、後から考えたらしい訓示の一件があるばかりに、十人乃至六人の人間だって、実のところは、どんなことをされたかわかったものではないという疑問が起きるのである...
久生十蘭 「海難記」
...実のところ、レックミア侍従は現時点で欲しい情報を全て把握(はあく)していた...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「王冠の重み」
...「――然し、実のところ、これから遙々帰って、お婆さんとさし向いで飯を食うのかと思うと足も渋る」わざとぞんざいに、然し暖く叱るように幸子が云った...
「一本の花」
...もう実のところ何の力もないのだ...
吉川英治 「親鸞」
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