...生ひ茂る雜草は畑を宛ら荒野のやうにしてしまつたのだ...
有島武郎 「秋」
...切ない樣な……宛ら葉隱れの鳥の聲の...
石川啄木 「鳥影」
...偉大なる殿堂に時は来た宛ら燃え立つ大森林のすさまじい夜景の熱風(ねつぷう)のやうにあの殿堂を揺がした喝采の声も嗄(しわ)がれていつた...
上里春生 「傾ける殿堂」
...そは宛ら古錢の面より殆消失せんとする肖像を見るにも似たり...
永井荷風 「佛蘭西人の觀たる鴎外先生」
...わが父常に美衣を購ふに嗇(やぶさか)ならざりしかばわれ宛ら宮廷の詩人の如くに奢るを得たり...
永井壮吉 「偏奇館吟草」
...森先生が六十年の生涯と其の間に研究された學藝とは宛ら百科辭典の如くに廣大なものである...
永井荷風 「森先生の事」
...宛ら御祭りのやうである...
濱田耕作 「沖繩の旅」
...きのふのごとく宛らに私の耳へ蘇つて来ないわけには行かない...
正岡容 「浅草燈籠」
...宛らそのころ評判だつたアメリカ探偵映画に見る悪漢の巣窟とでもいひ度げの風景が...
正岡容 「旧東京と蝙蝠」
...宛ら田山花袋の花柳小説を読むのおもひがすると云つて嬉しがつた...
正岡容 「旧東京と蝙蝠」
...明治開化当時宛らの瓦斯燈一基を門前に...
正岡容 「巣鴨菊」
...そのとき宛らに私は見た――...
正岡容 「東京万花鏡」
...私は宛ら亡国の悲歌を聴くおもひがした...
正岡容 「寄席風流」
...お客さまを満足させたというあの珍談を宛らである...
正岡容 「わが寄席青春録」
...日本の民窯は宛ら迷園の如くだとも云えよう...
柳宗悦 「京都の朝市」
...宛ら美しきものが彼等の中に何一つないかのやうにさへ見える...
柳宗悦 「雑器の美」
...宛ら他には何も無いかのやうに考へてゐる...
柳宗悦 「雑器の美」
...それは宛ら我国の伊勢あたりで見るのと同じ風俗である...
與謝野寛・與謝野晶子 「満蒙遊記」
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