...かくの如くして二葉亭の鉄槌は軽便安直なドグマや「あきらめ」やイグノランスを破壊すべく常に揮(ふる)われたのである...
内田魯庵 「二葉亭余談」
...市内の安直なホテルとは異なって...
高見順 「いやな感じ」
...甲府市外の湯村温泉、なんの変哲もない田圃(たんぼ)の中の温泉であるが、東京に近いわりには鄙(ひな)びて静かだし、宿も安直なので、私は仕事がたまると、ちょいちょいそこへ行って、そこの天保館という古い旅館の一室に自らを閉じこめて仕事をはじめるということにしていたのである...
太宰治 「黄村先生言行録」
...安直なお弁当をお上りになると...
チェスタートン Chesterton 直木三十五訳 「青玉の十字架」
...その死を題目にした小さな詩によって安直な感傷的の情緒を味わっていた事になるかもしれない...
寺田寅彦 「小さな出来事」
...そういう安直な見どころをむしろ故意になくするように勉(つと)めるくらいにしてもらいたいと思うのである...
寺田寅彦 「帝展を見ざるの記」
...物の哀れというのも安直な感傷や宋襄(そうじょう)の仁(じん)を意味するものでは決してない...
寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
...そう安直な無価値なものであろうとは思われないのである...
寺田寅彦 「俳句の精神」
...アインシュタインおよびミンコフスキーの理論のすぐれた点と貴重なゆえんはそんな安直な事ではないらしい...
寺田寅彦 「春六題」
...足のうらを冷却したりする安直な納涼法の研究をしたこともあった...
寺田寅彦 「涼味数題」
...わが雲助こそは、天真流露の自然児であるのに、かの折助は、下卑た、下等な、安直な、そのくせ小細工を弄(ろう)する人間の屑である...
中里介山 「大菩薩峠」
...これは又何んたる変りようでしょう、蝙蝠(こうもり)安を今様にしたような、安直な悪党が、双子縞の素袷に前下りの三尺帯のままながら、威風四方(あたり)を払って、別人のように颯爽(さっそう)として居ります...
野村胡堂 「悪人の娘」
...田舎へお金が送れるみたいな安直な気持ちでゐるンですものね」さう云つて...
林芙美子 「瀑布」
...学生向きで安直なのが...
古川緑波 「牛鍋からすき焼へ」
...此が北国のしぐれだつたらとてもこんな安直な塩梅式にはゆかないだらう...
正岡容 「下町歳事記」
...長田幹彦氏あたりの安直な作品と共に賣れゆきをよくしようとするものに外ならない...
水上瀧太郎 「貝殼追放」
...それぞれ何かの役にすこしずつ立つところの安直な品物がおびただしく並んで...
三好十郎 「恐怖の季節」
...安直な気やすめを急ぐような彼でもなかった...
吉川英治 「平の将門」
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