...その慢心に媚びるやうな幻を描いて...
阿部次郎 「三太郎の日記 第二」
...無意識的な媚びをたたえて睨(にら)むようにした...
高見順 「如何なる星の下に」
...主人の趣味にばかり媚びる訳に行かない...
谷崎潤一郎 「陰翳礼讃」
...隠すことなく飾ることなく、媚びることなく...
種田山頭火 「旅日記」
...会話の写生の迫真の程度はさう細く深くはないが、流行に媚びた、色の舎利塩(しやりゑん)の沢山に入つてゐるものだとばかり言つて了ふことの出来ないところがあつた...
田山録弥 「西鶴小論」
...媚びるような微笑を見せてフォン・コーレンと握手をした...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「決闘」
...併しながら其等はいづれも何等か我々のセンチメンタリズムに媚びてゐる...
土田杏村 「風は草木にささやいた」
...民衆の既成常識や卑俗常識に媚びることによって...
戸坂潤 「社大党はファッショ化したか?」
...細君は前より一層人に媚びるやうな調子で云つた...
ドストエウスキー Fyodor Mikhailovich Dostoevski 森林太郎訳 「鰐」
...策略とか媚びとか卑下とか或は威嚇とか...
豊島与志雄 「自由人」
...三十歳未満の私の精神に却って媚びた...
豊島与志雄 「祭りの夜」
...木村に媚びていたのである...
豊島与志雄 「夢の図」
...「でも――」綱手は、媚びるように、甘い口調であった...
直木三十五 「南国太平記」
...やわらかい媚びがあった...
林不忘 「あの顔」
...みんながトリユックの怜悧さうな顔を映したいといふので……アンネットさんはやさしく媚びるやうに笑つて是をすかさんと試み...
堀口九萬一 「フランソア・コッペ訪問記」
...がそれでも上に媚びて給料の一円もあげて貰いたいと女々(めめ)しく勝手口から泣き込んで歎願に及んだ事は一度も無く...
牧野富太郎 「牧野富太郎自叙伝」
...殊の外三田の好みに媚びた...
水上滝太郎 「大阪の宿」
...この国、黄賊の大軍に攻蝕(こうしょく)せらるること久しく、太守の軍、連年に疲敗(ひはい)し給い、各地の民倉は、挙げて賊の毒手にまかせ、百姓蒼生(そうせい)みな国主の無力と、賊の暴状に哭(な)かぬはなしと承る」あえて、媚びずおそれず、こう正直にいってからさらに重ねて、「われら恩を久しく領下にうけて、この秋(とき)をむなしく逸人(いつじん)として草廬(そうろ)に閑(かん)を偸(ぬす)むをいさぎよしとせず、同志張飛その他二百余の有為の輩(ともがら)と団結して、劉玄徳を盟主と仰ぎ、太守の軍に入って、いささか報国の義をささげんとする者でござる...
吉川英治 「三国志」
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