...更に彼は媚びるやうに小説家を見てから...
武田麟太郎 「釜ヶ崎」
...その声と共に満面に媚(こ)びを含んだナオミの顔だけがぼんやり見えます...
谷崎潤一郎 「痴人の愛」
...・酒飲酒好は――鉄のやうに強い意志を持つてゐるか、または貧乏でなければならない、節酒しなければ経済的に破綻する前に肉体的にまゐつてしまう!・市井にうづもれて市塵に染まず、親しんで狎れず、愛して媚びず、敬うて阿らず...
種田山頭火 「其中日記」
...」エレナは媚びるやうな調子で...
ドストエウスキー Fyodor Mikhailovich Dostoevski 森林太郎訳 「鰐」
...明媚な風光に接する時には...
豊島与志雄 「風俗時評」
...近頃は、巾着切を、くわえ込んでいるくせに――」富士春は、下から、媚びた目で、益満を見上げて「ま、お当て遊ばせな」と、座蒲団を押しつけた...
直木三十五 「南国太平記」
...のう、お春」「ええ?」富士春は、朗らかな益満の声に、笑顔と、媚とを見せた...
直木三十五 「南国太平記」
......
永井荷風 「江戸芸術論」
...「おとつゝあ居(ゐ)て呉(く)れたなあ」と媚(こ)びるやうにいつて自分(じぶん)の家(うち)の閾(しきゐ)を跨(また)いだ時(とき)は足(あし)に知覺(ちかく)のない程(ほど)に彼(かれ)は草臥(くたび)れて夜(よる)は闇(くら)くなつて居(ゐ)た...
長塚節 「土」
...精一杯の媚態(しな)を作り乍らゆすぶつて居りました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...耻を知らない人間に特色的な媚(こび)を含んだ態度です...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...蜜のような媚を含んでいるのが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...俗衆に媚(こ)びるためのものでなく...
萩原朔太郎 「詩の原理」
...「お忘れして、どういたしましょう――」と、雪之丞は、媚(こ)びて、怨じて、「お言葉が、うらめしゅうござります――わたくしの胸を、どう思召しておいでやら――」四人を交えぬ、二人だけの、離れ家の静寂――絹張り、朱塗りの燭の火が、なつかしく輝く下に、美しい、若い男女は、激しい情熱の瞳を見かわしたまま、いつまでも、手を取り合っていた...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...滑稽がかって来たかかる媚薬は未開野蛮民にあらずんば行われぬ...
南方熊楠 「十二支考」
...薄媚(はくび)の狂鶏三更暁を唱う〉...
南方熊楠 「十二支考」
...だから、家元ばかりはドンナ事があっても衣食に困らないようにして、芸道の研究に生涯を捧げ、時流に媚びず、批評家に過(あや)またれず、一意専心、自己の信念に向って精進せねばならぬ...
夢野久作 「能とは何か」
...その妖艶(ようえん)な媚(こ)びといったらない...
吉川英治 「新・水滸伝」
便利!手書き漢字入力検索
この漢字は何でしょう??