...奥の底にはなつかしい心持ちがないではない...
伊藤左千夫 「紅黄録」
...通されたのは奥の十畳...
大下藤次郎 「白峰の麓」
...奥さんによろしく...
太宰治 「虚構の春」
...「汝(おまえ)さん、知らない」「なんだね」「たいへんよ」「どうしたの」「お座敷の方で、大きな声がしてたでしょう」「そうね、何人(だれ)か来てるの」「へんな、壮士のような男が、二人来てるのだよ」「それが、どうしたの」「それがたいへんよ」「どうしたの」「どうって、ここの奥さんよ」「奥さんが、どうしたの」「汝(おまえ)さん」周囲(あたり)に眼をやって、「男があるのだって」「まあ、奥さんが」「そうよ、大森の料亭(りょうりや)かなんかで、男といっしょにいるところを、今来てる男に見つかって、書きつけを執(と)られたって」「ほんと」「ほんとだとも、だから、人の亀鑑(てほん)になる家のお媽(かみ)さんが、男をこしらえるなんて、ふざけてる、追んだしてしまえと云ってるのだよ」「旦那にそんなことを云ったの」「云ったとも、それに奥さんと男の執りもちをしたのは、あのお杉さんだって」「まあ、お杉さんが、呆(あき)れた人だね、それで、男って何人(たれ)だろうね」「馬の脚、馬の脚って云ってたから、俳優(やくしゃ)じゃないだろうかね」「そうね、馬の脚って云や俳優だろう、だが奥さんがそんなことをするだろうかね」「判らんが、奥さんはへんだから、店の平どんだって、どうしてるか判らないよ、よく伴(つ)れて歩くじゃないか」「そうね、お蔵なんかへ伴れて往くことがあるね」「そうだよ」「それで、奥さんは、どうしてるの」「いないのだよ」「どこへ往ったろうね」「いたたまれないで、逃げだしたかも判らないよ、前刻(さっき)居室(いま)で新聞かなんか読んでたが、いないのだよ」「里へ往ったろうかね」「まさか里へは往かれないよ」「それじゃ、どこだろう」「杉本さんじゃないの」「あの弁護士の杉本さん」「そうよ、奥さんは、あの杉本さんとも、へんよ」「まさか」「ほんとよ、私は見たことがあるもの」「ほんと」「ほんとだとも、正月の比(ころ)よ、旦那がお蔵へ往ってる時に、杉本さんが来て、奥さんの室(へや)へ入って、秘密(ないしょ)ばなしをして、二人で笑ったりなんかしてたよ」「そう、そんなことがあったの、ずいぶん、ねえ」「ずいぶんよ」その時どかどかと跫音(あしおと)をさして来たものがあった...
田中貢太郎 「春心」
...子どももなく年とった奥さんと二人で...
壺井栄 「二十四の瞳」
...かかる晴れがましい装いの奥から...
アーサー・コナン・ドイル Arthur Conan Doyle 加藤朝鳥訳 「同一事件」
...別の奥まった家の狭い室で...
豊島与志雄 「理想の女」
...この間、若党の奥様に仕えることの忠実さ、道中は危ないところへ近寄らせないように、時刻もよく見計らって、宿へ着いての身の廻りからなにから、痒(かゆ)いところへ手の届く親切ですから、奥様としては、全く不自由な旅へ出たとは思われないくらいの重宝(ちょうほう)さでした...
中里介山 「大菩薩峠」
...果して配所は奥州ということであって森入道西阿(もりのにゅうどうさいあ)というものが承って配所へ送ることになり...
中里介山 「法然行伝」
...明日の朝御飯の代りにと奥様がいわれましたからと言って...
中谷宇吉郎 「I駅の一夜」
...奥さんはどんな風にしてとしをとってゆくのだろう...
林芙美子 「恋愛の微醺」
...医者の死亡診断書もここへきとる」「その診断書をちょっと拝見できませんか?」「お易(やす)いこった」彼は奥へ行って書類の綴じ込みをもってきて...
平林初之輔 「私はかうして死んだ!」
...渋皮の奥なる甘い栗を取り出すやうに...
宮原晃一郎 「愛人と厭人」
...奥テル子の部屋の電灯も点かなかった...
室生犀星 「われはうたえども やぶれかぶれ」
...武鑑は安政三年に「辻元為春院法印、奥御医師、三十人扶持、下谷長者町」と書してゐるのが、最後の記載である...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...昔の東京の眺めは何となく奥床しいところがあった...
夢野久作 「街頭から見た新東京の裏面」
...いま大奥の一間に囁(ささや)き合っているのは...
吉川英治 「剣難女難」
...その附近から奥の中尾山まで...
吉川英治 「新書太閤記」
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