...川のふちの、森の暗い影に、なにか巨大な、奇態な形をした、黒いものがそそり立っていた...
ワシントン・アーヴィング Washington Irving 吉田甲子太郎訳 「スリーピー・ホローの伝説」
...生徒達は最も奇態な...
エドワード・シルヴェスター・モース Edward Sylvester Morse 石川欣一訳 「日本その日その日」
...奇態なことに、別に臭気というものを感じなかったけれど、――それは後に至って、一種の瓦斯(ガス)マスクが懸けられていたので、臭気を感じなかったことが判った――このパッと差し込んだ明るさと、パチパチと物の焼け裂けるような音響とは、八十助に絶望を宣告したも同様だった...
海野十三 「火葬国風景」
...まったく奇態なことには...
スティーブンソン Stevenson Robert Louis 佐々木直次郎訳 「宝島」
...何かしら奇態な代物にすぎないのである...
ドストエーフスキイ 神西清訳 「永遠の夫」
...「驢馬先生、おまえのこのひと言は金貨一枚だけの値打ちがあるぞ、ほんとに今日おまえにくれてやるわい、だが、そのほかのことは嘘だぞ、まっかな嘘だぞ、なあこら、おばかさん、われわれ一同がこの世で信仰を持たないのは心があさはかなからだ、なにしろ、暇がないからなあ、第一、いろんな用事にかまけてしまう、第二に神様が時間をろくろく授けてくださらないで、せいぜい一日が二十四時間やそこいらでは、悔い改めるはさておき、十分に眠る暇もないからなあ、ところが、おまえが敵の前で神様を否定したのは、信仰のことよりほかには考えられないような場合で、しかも是が非でも自分の信仰心を示さなくっちゃならないような土壇場(どたんば)じゃないかい! おいどうだ、きょうだい、一理あるだろうじゃないか?」「一理あるにはありますがね、まあ、よく考えて御覧なさい、グリゴリイ・ワシーリエヴィッチ、一理あればこそ、なおのこと、わたしにとって罪が軽くなるというものです、もしわたしが間違いのない正当な信仰を持っていたとしたら、その信仰のための受難に甘んじないで、けがらわしい回々教(フイフイきょう)へ転んだのは、全く罪深いことに違いありませんよ、しかし、それにしても、責め苦を受けるというところまではいかないで済んだはずですよ、だって、その時、眼の前の山に向かって、さあ動いて来て敵をつぶしてしまえと言いさえすれば、山は即刻動きだして、敵のやつらを油虫かなんぞのように押しつぶしてしまったはずです、そうすれば、わたしは何ごともなかったように、鼻うたでもうたいながら、神の栄光をたたえながら引き上げて行きますよ、ところが、もしその土壇場になって、そのとおりにやってみて、わたしがその山に向かって敵を押しつぶしてくれと、わざと大きな声でどなったところで、山がいっこう敵を押しつぶしてくれそうにないとしたら、わたしだってそんな恐ろしい命がけの場合に、どうして疑いを起こさずにいられるものですか? それでなくても、とても天国へなどまともに行きつけるものでないことを承知していますのに(だって、わたしの声で山が動かなかったところをみると、天国でもわたしの信仰をあまり信用してくれなさそうですから、たいした御褒美(ごほうび)があの世でわたしを待っているようにも思われませんからね)、何をすき好んで、そのうえ、役にも立たないのに自分の生皮を剥(は)がせる必要がありましょう? たとえ、もう半分背中の皮を剥がれながらわたしがどなったりわめいたりしてみたところで、山はびくともしやしませんからね、こんな瞬間には疑いが起こるくらいは愚かなこと、恐ろしさのあまりに、思慮分別もなくなるかもしれません、いや、分別を巡らすなんてことは全然不可能です、してみれば、この世でもあの世でも、自分に何の得になることでもなく、たいして御褒美にもあずかれないとわかったら、せめて自分の皮だけでも大事にしようと思ったからとて、それがいったいどれだけ悪いことでしょう? ですから、わたしは神様のお慈悲を当てにして、何事もきれいに許していただけるものと、どこまでもそう思っているのです」八 コニャクを飲みながら討論はこれで終わったが、奇態なことに、あれほど上々の御機嫌であったフョードル・パーヴロヴィッチが、終わりごろから急に苦い顔をしだした...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...ここで奇態な人間だと...
中里介山 「大菩薩峠」
...彼の主人たる富める大長老も亦(また)奇態な夢を見るようになった...
中島敦 「南島譚」
...おれは奇態なほどその女にひきつけられてしまった...
西尾正 「放浪作家の冒険」
...奇態な吐息が出た...
火野葦平 「花と龍」
...アカーキイ・アカーキエウィッチにはなんとなく奇態なものに思われた...
ニコライ・ゴーゴリ 平井肇訳 「外套」
...一種独特な奇態な服装を要求したかとも思はれた...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...ところで奇態なことに...
ニコライ・ゴーゴリ 平井肇訳 「鼻」
...突き飛ばされる毎にバッタのように驚いてハードル跳びを続けて行く奇態な跛馬と...
牧野信一 「ゼーロン」
...「奇態な壺ですな...
松永延造 「職工と微笑」
...奇態なことが認められる...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トビアス・ミンデルニッケル」
...奇態なる地上の群生動物にすぎない...
吉川英治 「新書太閤記」
...「――やっ?」「――や?」「――や? 奇態な奴」果たせるかな...
吉川英治 「宮本武蔵」
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