...「一体、あの音は何だろう」「この間の雷鳴(かみなり)と云い、不思議なことじゃ」「俺は七十になるが、まだこんな不思議なことに逢ったことはない、奇体なことじゃ、これは何かの兆(しらせ)と思われる」その翌日の昼比不意に旋風が起って、村の百姓屋の物置小屋を捲きあげて春日川の川中へ落した...
田中貢太郎 「不動像の行方」
...花屋の老婆が奇体な無関心さで客の老婆に花束を渡している...
谷譲次 「踊る地平線」
...あの奇体なギリシャ・ドイツ折衷式脚本の一つであった...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...同じ奇体な分析病のために...
中島敦 「文字禍」
...「出来る限り多くの事物が(あるいはその事物の原因が)自分の理解を絶した彼方にあればいい」という前のとはまるで反対の奇体な願望とであった...
中島敦 「狼疾記」
...奇体な事に眼が横町へ曲りたくない...
夏目漱石 「坑夫」
...写真は奇体なもので...
夏目漱石 「それから」
...写真は奇体なもので...
夏目漱石 「それから」
...西の者で南の方から養子に来たものの宅(うち)はどこだと奇体な質問を掛けた...
夏目漱石 「彼岸過迄」
...奇体な物だなあ」と大分(だいぶ)感心した様子であった...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...」「五人の者が斯んなに一列に腕を組んで――」また私に奇体な亢奮でもされては困るとでも思つたらしく...
牧野信一 「歌へる日まで」
...奇体な飄逸味と溢るゝばかりの熱情を持つた化物のやうな弁士ではありませんか...
牧野信一 「「風博士」」
...焔というものはよく見ていると奇体(きたい)なものだ...
宮沢賢治 「学者アラムハラドの見た着物」
...じつに奇体(きたい)に見えました...
宮沢賢治 「かしわばやしの夜」
...又三郎などもはじめこそはほんとうにめずらしく奇体(きたい)だったのですがだんだんなれて見ると割合ありふれたことになってしまってまるで東京からふいに田舎(いなか)の学校へ移って来た友だちぐらいにしか思われなくなって来たのです...
宮沢賢治 「風野又三郎」
...一本だけは奇体(きたい)に黄いろなんだろう...
宮沢賢治 「黄いろのトマト」
...奇体(きたい)だと思っていたら...
宮沢賢治 「さいかち淵」
...「これをなあお子供衆のお腰に下げておおきやすと奇体(きたい)に虫除けになりますそうでなあ方々からくれくれ言やはりますので皆あげてしまいましてなあもうこれだけより残っとりませんけれど――どうぞお持ちやして」これは尼君がつれづれの手細工であった...
和辻哲郎 「古寺巡礼」
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