...それは夕闇(ゆうやみ)の催した晩秋だった...
有島武郎 「或る女」
...夕闇の街路には、先刻(さっき)のエレベーター・ボーイを始め数人の人々が死体を取り囲んでいた...
江戸川乱歩 「五階の窓」
...埃をつきぬける・石地蔵尊へもパラソルさしかけてあるのぼりくだりの道の草枯れ明るくて一間きり(苦味生居)・柵をくゞつて枯野へ出た子供になつて馬酔木も摘みます夕闇のうごめくは戻る馬だつた八十八才の日向のからだである(苦味生さん祖母)さびしいほどのしづかな一夜だつた...
種田山頭火 「行乞記」
...『人影、岩、焚火、夕闇、不恰好な一本の樹――それだけしかない...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「決闘」
...根岸の里の夕闇を...
中里介山 「大菩薩峠」
...夕闇(ゆうやみ)の窓際(まどぎわ)で電燈(でんとう)をつけずに読み入っていたりして...
中谷宇吉郎 「『西遊記』の夢」
...海には黒く夕闇(ゆふやみ)がしみこんで来る時分であつた...
新美南吉 「良寛物語 手毬と鉢の子」
...夕闇の中を神田の家へ急いで居りました...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...夕闇はきた...
浜尾四郎 「黄昏の告白」
...夕闇の中でまたもや殺し合いがはじまった...
久生十蘭 「海難記」
...もう夕闇が隅々へ行渡って薄暗くなった此の部屋の中に...
二葉亭四迷 「平凡」
...濃くなってゆく夕闇の中を...
ナサニエル・ホーソン Nathaniel Hawthorne 三宅幾三郎訳 「ワンダ・ブック――少年・少女のために――」
...さて夕闇が迫ると...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「道化玉座」
...鍾進が先に立って消火に努めていると、夕闇の一角から、「西涼の徳、すでに数日前より、城内に在って、今宵を待てり」という大音が聞え、敵やら味方やら知れない混雑の中に、鍾進は一刀両断に斬りすてられた...
吉川英治 「三国志」
...二条里内裏(さとだいり)は、殿上殿下、ひろい夕闇が、せわしなげに、すべてチロめく灯であった...
吉川英治 「私本太平記」
...夕闇のせいか、半兵衛の面(おもて)は、琅(ろうかん)のようにきれいである...
吉川英治 「新書太閤記」
...ただ心ぼそいのは、夕闇の陰影が、自分の影にも、濃くなりかけていたことだった...
吉川英治 「平の将門」
...銭の手もとも夕闇にまつわられて灯が欲しくなりかけた頃...
吉川英治 「平の将門」
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