...ことしは初夏以来雨ばかり降り続く妙な気候なので...
大杉栄 「獄中消息」
...市中(いちなか)は物のにほひや夏の月凡兆(ぼんちょう)あつし/\と門/\(かどかど)の声 芭蕉「暑い夏の夜市中を通っておるとむくむくと物の匂(にお)いが鼻を衝(つ)く...
高浜虚子 「俳句への道」
...夏の中に、秋がこっそり隠れて、もはや来ているのであるが、人は、炎熱にだまされて、それを見破ることが出来ぬ...
太宰治 「ア、秋」
...やがてこの鬼女も身ごもり、生れたのは女の子で春枝と名づけられ、色白く唇(くちびる)小さく赤い、京風の美人、それから二年経(た)って、またひとり女の子が生れ、お夏と呼ばれて、父に似て色浅黒く眼が吊(つ)り上ったきかぬ気の顔立ちの子で、この二人は自分の母が京の公卿の血を受けたひとだという事など知る筈もなく、氏より育ちとはまことに人間のたより無さ、生れ落ちたこの山奥が自分たちの親代々の故郷とのんきに合点して、鬼の子らしく荒々しく山坂を駈(か)け廻(まわ)って遊び、その遊びもままごとなどでは無く、ひとりは旅人、ひとりは山賊、おい待て、命が惜しいか金が惜しいかとひとりが言えば、ひとりは助けて! と叫んでけわしい崖(がけ)をするする降りて逃げるを、待て待て、と追ってつかまえ大笑いして、母親はこれを見て悲しがるわけでもなく、かえって薙刀(なぎなた)など与えて旅人をあやめる稽古(けいこ)をさせ、天を恐れぬ悪業、その行末もおそろしく、果せる哉(かな)、春枝十八お夏十六の冬に、父の山賊に天罰下り、雪崩(なだれ)の下敷になって五体の骨々微塵(みじん)にくだけ、眼もあてられぬむごたらしい死にざまをして、母子なげく中にも、手下どもは悪人の本性をあらわして親分のしこたまためた金銀財宝諸道具食料ことごとく持ち去り、母子はたちまち雪深い山中で暮しに窮した...
太宰治 「新釈諸国噺」
...夏休みに帰省している間は毎晩のように座敷の縁側に腰をかけて...
寺田寅彦 「庭の追憶」
...昨年の夏私が国へ帰って後...
豊島与志雄 「生と死との記録」
...燈火の光に代って蒼々(あおあお)とした夏の夜の空には半輪(はんりん)の月...
永井荷風 「散柳窓夕栄」
...旦那は前からお夏さんを御存じのようですが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...――お夏を誘拐(かどわか)した礼に清水和助から貰った金が五十や三十あったはずだ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...それは夏の日の蝉のやうでもあつた...
林芙美子 「なぐさめ」
...前年の夏、ウクライナ、コーカサスの労働者のストライキがきっかけになってロシア全土に赤い汚点がつき、革命歌が潮騒のように冬宮のあたりまでひろがってきたが、貴族やブゥルジョアジィは革命より戦争のほうがましだといって、とうとうロシアを日露戦争へひきずりこんでしまった...
久生十蘭 「淪落の皇女の覚書」
...大昔夏に雪降る日記など読みて都を楽しめり我恋などはとうの昔に卒業し学者として静かに書斎に立籠り古書に親しむ作者の俤が其の儘出てゐる...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...植物は春夏秋冬わが周囲にあってこれに取り巻かれているから...
牧野富太郎 「牧野富太郎自叙伝」
...夏のもたらし得るすべての実現よりも...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「小フリイデマン氏」
...夏の初めである...
森鴎外 「あそび」
...去年夏余復東征(きよねんなつよまたとうせいす)...
森鴎外 「壽阿彌の手紙」
...真夏の光りにヒラヒラと輝いている...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
...去年の夏伏見城の工事場で...
吉川英治 「宮本武蔵」
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