...堤上に立つと、東南一帯は眼路のかぎり茫々たる大砂原で、その中に小丘状の毒塚が無数に連っていた...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...三軒茶屋堤の稱もあり...
大町桂月 「春の郊外」
...陽に土木治水費中堤防修築費と称し陰に谷中村買収の意味を含まして曖昧なる土木費を議決したり...
田中正造 「非常歎願書」
...住吉川の堤防が決潰(けっかい)しそうだと云う噂(うわさ)が耳に這入ったり...
谷崎潤一郎 「細雪」
...そうして梳(くしけず)つたやうな細い雨の足が土堤から川水の上を平面にさつと掠(かす)つてゐた...
田村俊子 「木乃伊の口紅」
...河水が堤防とすれすれに高まってそのすき間からあふれはじめるのと同じ...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...堤の上を歩むものも鍬(くわ)か草籠をかついだ人ばかり...
永井荷風 「葛飾土産」
...江戸川堤を歩す...
永井荷風 「荷風戰後日歴 第一」
...永くこの堤上を以て都人観花の勝地たらしむべく...
永井荷風 「向嶋」
...――浅草警察署の管轄内(かんかつない)の日本堤分署です...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...私はこの堤を通つて...
原民喜 「夏の花」
...突堤の上に焼け残つた木株や石が異様に黒ずんで見えてゐる...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...いいえと云ったまんまどうしていいかわからない様にしてもとの堤に立って居た...
宮本百合子 「グースベリーの熟れる頃」
...(その眼は怒りと狂激に燃え、全身は一つの赤熱した鉄塊のようである、怒号し、うち呼ばわり、見えざるその手を以てあらゆる群集を指揮し、煽動し、大風のはためきを以て空中を飛躍する……)彼等はあらゆる陋巷から出て来る、路次から、蜂(ほうか)から、工場から、兵器製作所から、伝播する血の衝動と無際限の躍進、燥狂と無秩序の大進軍、切られた堤防、忽ちに全都市を席捲しに行く畏怖と昂奮の火の手...
百田宗治 「騒擾の上に」
...嘗(かつ)て加藤博士が国会猶早しと呼びたるの時代ありき、嘗て文部省は天下に令して四書五経を村庠(そんしやう)市学の間に復活せしめんとせし時代もありき、当代の大才子たる桜痴福地先生が王道論とかいへる漢人にても書きそふなる論文をものせられし時代もありき、ピータア、ゼ、ヘルミット然たる佐田介石師が「ランプ」亡国論や天動説を著して得々乎として我道将(ま)さに行はれんとすと唱はれたる時代もありき、丸山作楽君が君主専制の東洋風に随喜の涙を流されし時代もありき、如此(かくのごとく)に我日本の学者、老人、慷慨家(かうがいか)、政治家、宗教家達は、我文明の余りに疾歩するを憂へて、幾たびか之を障(さゝ)へんとし、之が堤防を築き、之が柵門を建られつれど、進歩の勢力は之に激して更に勢を増すのみにして、反動の盛なると共に正動も亦(また)盛にして、今や宛然(ゑんぜん)として欧羅巴(ヨーロッパ)ナイズされんとせり、勿論輓今(ばんきん)稍(やゝ)我人心が少しく内に向ひ、国粋保存の説が歓迎さるゝの現象は見ゆれど、是唯我人民が小児然たる摸倣時代より進んで批評的の時代に到着したるの吉兆として見るべきものにして、余は之れが為めに我が文明の歩を止むべしとは思はざるなり...
山路愛山 「英雄論」
...蹴(け)放されて土堤(どて)から転げ落ちた...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...堤を切った怒濤のごとく...
吉川英治 「三国志」
...最後に四郎とわかれた加茂川堤の時の宿怨を胸に新たにした...
吉川英治 「親鸞」
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