...「凡そ事物の能(よ)く久遠(くをん)に垂るる者は...
芥川龍之介 「雑筆」
...……村方の人らしい、鳴きながらの蛙よりは、泥鼈を抱いて居さうな、雫の垂る、雨蓑を深く着た、蓑だといつて、すぐに笠とは限らない、古帽子だか手拭だか煤けですつぱりと頭を包んだから目鼻も分らず、雨脚は濁らぬが古ぼけた形で一濡れになつて顯はれたのが、――道巾は狹い、身近な女二人に擦違はうとして、ぎよツとしたやうに退ると立直つて提灯を持直した...
泉鏡花 「遺稿」
...頭上の鷲鷹(しゅうよう)比翼を伸(のば)して天上の祝福を垂るるあり...
内村鑑三 「基督信徒のなぐさめ」
...神産巣日御祖(かむむすびみおや)の命の富足(とだ)る天の新巣(にひす)の凝烟(すす)の八拳(やつか)垂るまで燒(た)き擧げ二六...
稗田の阿礼、太の安万侶 「古事記」
...一幹は横はり、一幹は立ちて、枝を垂る...
大町桂月 「越ヶ谷の半日」
...背は水平にして腰に向って傾斜し……尾は付根高く低く垂る...
橘外男 「陰獣トリステサ」
...いたづらに無效の聲と過ぎ去らじ』*クロニーオーンしか宣んし點頭(うなづ)き垂るゝ双の眉...
ホーマー Homer 土井晩翠訳 「イーリアス」
...神の愛護は彼に垂る』或は卒伍の卑き者罵り呼ぶにいで逢へば...
ホーマー Homer 土井晩翠訳 「イーリアス」
...諸神諸人を司どる天王之に愛を垂る...
ホーマー Homer 土井晩翠訳 「イーリアス」
...獨り奔然一瀉し來る溪泉の水灑々として所在に簾を垂るゝもの...
長塚節 「草津行」
...利鎌もて斷つといへどももとほるや蚯蚓の如き洟垂るゝ子等みゝず/\頭もなきとをもなきと蕗の葉蔭を二わかれ行く秀眞子ひとり居の煩しきをかこつこと三とせばかりになりけるが...
長塚節 「長塚節歌集 中」
...紅緑の花咲く蓼や秋の色水際に蓼の垂り穂や秋の晴れ我が姿水に映つして蓼の花一川の岸に穂を垂る蓼の秋秋深けて冴え残りけり蓼の花ボントクタデ(飯沼慾斎著『草木図説』の図)(下方の花穂の一部ならびに果実の二つは牧野補入)婆羅門参キク科の一植物に...
牧野富太郎 「植物一日一題」
...水の粉やあるじかしこき後家の君尼寺や善き蚊帳垂るゝ宵月夜柚(ゆ)の花や能酒蔵(ざう)す塀の内手燭(てしょく)して善き蒲団出す夜寒かな緑子の頭巾眉深きいとほしみ真結びの足袋はしたなき給仕かな宿かへて火燵(こたつ)嬉しき在処(ありどころ)後の形容詞を用いる者...
正岡子規 「俳人蕪村」
...その木下を通る者頭を垂るとあり...
南方熊楠 「十二支考」
...富士の嶺はをみなも登り水無月の氷のなかに尿垂るとふ與謝野寛氏の歌だ...
水上瀧太郎 「山を想ふ」
...(画家首(こうべ)を垂る...
ライネル・マリア・リルケ Rainer Maria Rilke 森鴎外訳 「家常茶飯」
...矢代もパリ以来の二人の緊張の弛み垂るんだ面を支えようとして...
横光利一 「旅愁」
...彼の五体を駆けめぐっている血行と頭脳の活動から垂るる滴々(てきてき)のものだといったほうがあたっていよう...
吉川英治 「新書太閤記」
便利!手書き漢字入力検索