...所以(ゆえ)ある哉(かな)...
泉鏡花 「婦系図」
...果(はた)せる哉...
内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
...彼は所謂よい家庭人であり、程よい財産もあるようだし、傍に良妻あり、子供は丈夫で父を尊敬しているにちがいないし、自身は風景よろしきところに住み、戦災に遭ったという話も聞かぬから、手織りのいい紬(つむぎ)なども着ているだろう、おまけに自身が肺病とか何とか不吉な病気も持っていないだろうし、訪問客はみな上品、先生、先生と言って、彼の一言隻句にも感服し、なごやかな空気が一杯で、近頃、太宰という思い上ったやつが、何やら先生に向って言っているようですが、あれはきたならしいやつですから、相手になさらぬように、(笑声)それなのに、その嫌らしい、(直哉の曰く、僕にはどうもいい点が見つからないね)その四十歳の作家が、誇張でなしに、血を吐きながらでも、本流の小説を書こうと努め、その努力が却(かえ)ってみなに嫌われ、三人の虚弱の幼児をかかえ、夫婦は心から笑い合ったことがなく、障子の骨も、襖(ふすま)のシンも、破れ果てている五十円の貸家に住み、戦災を二度も受けたおかげで、もともといい着物も着たい男が、短か過ぎるズボンに下駄ばきの姿で、子供の世話で一杯の女房の代りに、おかずの買物に出るのである...
太宰治 「如是我聞」
...前後不覚になつて、どうして寝床にはいつたやら、いつ寝たやら、一切合切不明なり、しかも些の不都合なし、善哉々々...
種田山頭火 「行乞記」
...私は近来水の句がだん/\出来るやうになつた、善哉々々...
種田山頭火 「其中日記」
...然(しか)らば樹上の五拾両は誰が隠し置き候哉と御詮議(ごせんぎ)に相なり候ては大変なりと...
永井荷風 「榎物語」
...釣台に野菊も見えぬ桐油哉(かな)これはその時の光景を後から十七字にちぢめたものである...
夏目漱石 「思い出す事など」
...目刺(めざ)しの燒けるうちに、ざつと筋を通して見な」平次は漸(やうや)くとぐろをほぐして、煙草盆を引寄せました「斬つたのは山下の御浪人で、大寺源十郎といふ人、この人は柄が小さくて、顏も聲も女の子のやうに優しいが、腕は餘つ程出來るやうですよ」「その人なら、おれも顏くらゐは知つて居るよ」「昨夜御切手町の藥種屋長崎屋庄六の家にウンザのケエがあつて」「なんだ、そのフン反り返つた――てえのは」「ウンザのケエですよ、――何んとかや、哉(かな)つて、十七文字並べる奴、都々逸(どどいつ)の端折(はしを)つたの」「俳諧(はいかい)だらう」「そのケエですよ、集つたのは、山崎町の酒屋倉賀屋倉松と、車坂の呉服屋中田屋杉之助、それに浪人の大寺源十郎と主人の庄六を入れて四人、子刻(こゝのつ)(十二時)過ぎまでパチパチやつた」「馬鹿だなア、花合せぢやあるめえし、ヘエケエをパチパチやる奴があるか」「素人量見ですよ、どうせあつしはそんなチヨボクレは知らねえ、――兎も角子刻(こゝのつ)過ぎまで噛み合つて、――これもいけませんか」「それからどうしたのだ」「車坂へ歸る中田屋杉之助と、山下へ歸る大寺源十郎と一緒に長崎屋を出た所で、提燈(ちやうちん)が一つ、長崎屋の紋の付いたのを持つて、杉之助が先に立つて來たが、途中で紙入を忘れた事を思ひ出して、中田屋杉之助がもう一度長崎屋へ引返した」「――」「その時、どうせ私の家は近いから、と提燈を大寺源十郎に持たせ、その上夜半から急に薄寒い小雨になつたので、――失禮だがまだ新しいから、これを――と、用心のために着て居た合羽(かつぱ)を脱いで、辭退する大寺源十郎に着せ、中田屋杉之助は傘だけ差して長崎屋に戻り、幸ひ無事に座布團の下に入つて居た紙入を取つて貰つて、そのまゝ家へ歸つた」「――」「一方、中田屋杉之助の合羽を着て、長崎屋の印(しるし)の入つた提燈を持つた大寺源十郎は、少し風邪氣味だつたので、薄寒い襟元(えりもと)をかき合せ乍ら、正寶寺門前まで來ると、いきなり闇の中から飛出して後ろからパツと匕首(あひくち)で土手つ腹を突いて來た者がある」「聲も掛けずにか」「え、卑怯(ひけふ)な野郎で、鐵砲玉のやうに飛出すと、油斷をして居る大寺源十郎の後ろから身體ごと叩き付けて來たんださうです...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...あゝ孝なる哉...
牧野信一 「親孝行」
...辞安様追々御こゝろよく御坐候哉...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...白井孝右衛門と暴動には加はらぬが連判をしてゐた摂津(せつゝ)森小路村(もりこうぢむら)の医師横山文哉(ぶんさい)...
森鴎外 「大塩平八郎」
...話ずきな志賀直哉氏との雜談のうちに...
吉川英治 「折々の記」
...どうしたものか」翌日はもう酒を飲んでただ快哉(かいさい)をいっている日ではない...
吉川英治 「三国志」
...ごたいくつでございましょうな」不知哉丸(いさやまる)は答えもせず...
吉川英治 「私本太平記」
...不知哉丸の身を他へ隠すなどの騒ぎを生んでいたのである...
吉川英治 「私本太平記」
...不知哉丸もはや十三か...
吉川英治 「私本太平記」
...不知哉(いさや)丸と藤夜叉(ふじやしゃ)のことでも...
吉川英治 「私本太平記」
...その比は延喜(えんぎ)一条院の御代などの如くしのび侍るべく哉」...
和辻哲郎 「埋もれた日本」
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