...南京放送局の婦人アナウンサーが哀調を帯びた異国語で何かしら悠(ゆっ)くりと喋っている声だけが残っていた...
海野十三 「深夜の市長」
...物語りの哀調にさそわれて...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...私の即興的に作曲する哀調のこもつた歌を口ずさんでは涙ぐんでゐた...
太宰治 「思ひ出」
...あの哀調は病める旅人の愁をそゝるに十分だ...
種田山頭火 「行乞記」
...訳注『榾あかり』の唄――ロシヤ農家の宵の情景をうたった哀調ゆたかな民謡...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「イオーヌィチ」
...千重子の笑いが哀調に変ろうとするとたん...
豊島与志雄 「自由人」
...浄瑠璃を聴くに異らぬ一種の哀調が漲(みなぎ)っていた...
永井荷風 「里の今昔」
...今もってその哀調がどうしてかくも私の心を刺※するかを不思議に感じなければならなかった...
永井荷風 「日和下駄」
...駒込淺嘉町の大地主幸右衞門の家は、その廣さと裕福さのせゐで、いつものやうに森閑(しんかん)として、隱れん坊遊びの歌だけが、哀調を帶びて、屋敷中何處までも聽えるのでした...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「それぢや早く見てやれ」さう言へば、哀調を帶びた、『まアだゞよう』と言つて居た女の子の聲が、先刻から聞えなくなつて居るやうです...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...哀調悲傷を極めているに見ても解る...
萩原朔太郎 「詩の原理」
...その声が哀調を帯びてゐる...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...遠い昔の女性さへ偲ばれる哀調を帯びて珍しく弱音を吐かれたものであつた...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...さすらひの唄にネンネの節があり久良伎さすらひと追分一つ畠なり同ゆこか戻ろかオーロラの下に」の哀調には...
正岡容 「大正東京錦絵」
...尤も私などでも昭和初年始めて先代木村重松の哀調に接する迄は殆んど食はず嫌ひだつたし...
正岡容 「大正東京錦絵」
...節廻しに些か哀調のあつた音曲師の文廼家(ふみのや)かしくが北海道登別(のぼりべつ)温泉の結構雄大に瞠目して...
正岡容 「落語家温泉録」
...哀調がありませんな...
吉川英治 「三国志」
...吹奏(すいそう)の律調(しらべ)の厳かな裡(うち)にも哀調があるところから察すると...
吉川英治 「宮本武蔵」
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