...中央にありて思案に咽ぶ如き痛ましき妻の顏妻を頼りに思ふ如く片手に削りかけの下駄をもちてその顏を仰いだる弱々しき夫の顏...
千家元麿 「自分は見た」
...影縹緲の空遠くゆふべいざよふわが姿無心のあとは有(いふ)情の誰が高樓(かうろう)の眺めぞや珠簾かすかに洩れいでゝ咽ぶ妻琴ねも細く...
土井晩翠 「天地有情」
...登高烟は沈み水咽ぶ五城樓下(ごじやうろうか)の夕まぐれ高きに登り佇めば遠く悲雷(ひらい)の響あり心の空に吹き通ふ風の恨に誘はれて色こそ悼め夕雲の嶺に歸るもなつかしや...
土井晩翠 「天地有情」
...神よ問はなむぬばたまの「夜」のもすそに包まれて咽ぶ涙は幾何ぞ靜けき夢は幾何ぞ...
土井晩翠 「天地有情」
...弦月落ちて宵暗の星影凄し廣瀬川恨むか咽ぶ音寒く川波たちて小夜更けて秋も流れむ水遠く...
土井晩翠 「天地有情」
...」さらばとばかり夕浪も咽ぶ恨のせゝらぎや霧たちこむる谷川は跡見返れどかひぞなき浮世の秋ももろともに流れ/\て末遠く...
土井晩翠 「天地有情」
...落葉が下に水咽ぶ...
長塚節 「長塚節歌集 中」
...逢ふ事も涙に咽ぶばかりなり』といふ文字もあつて...
野口米次郎 「能楽論」
...胡弓の咽ぶ如き音色...
長谷川伸 「中山七里 二幕五場」
...おはま (泣き咽ぶ)お登世 兄さんだ兄さんだ...
長谷川伸 「瞼の母 二幕六場」
...足柄の五月の霧の香に咽ぶ君あらぬ後杜鵑と我と五月の若葉時の足柄は好天必ずしも続かず雨や霧の日も多い...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...君と共に咽ぶ筈の山の霧であるが君なき後とて図らずも杜鵑と二人で咽んでゐる所ですとあの世の人へ報告する心持も持つてゐるやうな歌である...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...」「そんな不自然な真似は厭だア!」「ほう! 不自然な真似は厭――と? 一寸待つて呉れ、俺、何だかわけが解らなくなつてしまつたよ……」「俺も――」と彼は、咽ぶやうに、一気に盃を干した...
牧野信一 「夏ちかきころ」
...乾草の香りに胸をつかれて咽ぶ見たいな息苦しさを感じた...
牧野信一 「山を越えて」
...それ共又感涙に咽ぶかも知れぬ...
山本宣治 「婦人雑誌と猫」
......
横瀬夜雨 「花守」
...その唇の上に、太陽も、人も、そよかぜも、蜜蜂も、身を投げて寄り伏し、酔ひと夢の中に、焼けて咽ぶ...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集拾遺」
...僅かに上り坂になったまま霧に咽ぶ西方へと消えていった...
H. P. ラヴクラフト H.P.Lovecraft The Creative CAT 訳 「狂気の山脈にて」
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