...」と片手に燐寸(マッチ)を持ったと思うと、片手が衝(つ)と伸びて猶予(ため)らわず夫人の膝から、古手紙を、ト引取って、「一度お話した上は、たとい貴女が御不承知でも、もうこんなものは、」と※(ぱっ)と火を摺(す)ると、ひらひらと燃え上って、蒼くなって消えた...
泉鏡花 「婦系図」
...戸棚(とだな)の中から古手紙の束を出して来て...
寺田寅彦 「球根」
...松本清張えがく古手刑事など...
十返肇 「日本推理小説の曲り角」
...おかみさんは古手拭の頬冠を結び直し...
永井荷風 「買出し」
...女房が釜くどの前へ籠をころがしたまゝで水汲みに行つたうちに火が燃えしや(ママ)つて、籠の松葉へついたのだ相だ忽ちのうちに消しとめた、建具屋は頻りに怒鳴つて怒つてゐる、女房は困つた顏でぼんやり立つて居る、隣のものもかけてきて立つて居る、火事騷ぎとしては尤も小さな騷ぎだが騷ぎは騷ぎであつた、半燒の物件は左の如くである、一、竹籠、一、松葉一籠、一、古手拭一本、夕方左千夫へ返事の稿をつぐ澁る、やめ、この日の來客中岫のねえさん、儀理を述べかた/″\妹の附添を連れて來た、羽生の叔母女の子を連れてきた、下妻に居る祖母も來た、仕立物を出して見せる、をととひ來た連中がうがひ茶碗を丼と見、黄八丈の夜具を黄縞の木綿と見て行つたものがあつたなどといふ話をして笑ふ、妹はみんなに仕立物を引つ張りまはされるので汚されては大變だと思つて手を握つたといつて居る、隣村から女房ども二人で來た、見て居たら書院へ行つて床の間へ腰を掛けた、朝、蕎麥、晝、鮒の洗ひ、夕、鯉こく、(明治三十六年)...
長塚節 「十日間」
...一束(ひとたば)の古手紙へ油を濺(そそ)いで...
夏目漱石 「明暗」
...音次郎の頸に巻いた古手拭を...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...外交官の古手(ふるて)ぐらいは出るらしいから...
久生十蘭 「姦(かしまし)」
...変哲(へんてつ)もないこの古手帳の中には...
久生十蘭 「黒い手帳」
...ラスプーチンの客間は官僚や将軍の古手...
久生十蘭 「淪落の皇女の覚書」
...謂わば古手の思想だ...
二葉亭四迷 「平凡」
...此蒼褪(あおざ)めた生気のない古手の思想が...
二葉亭四迷 「平凡」
...古手の思想が凝固(こりかた)まって...
二葉亭四迷 「平凡」
...思軒の友高橋太華が若干通の古手紙を買つた...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...酒樽の古手奴...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...「――居留守なんて、古手だわよ、第一、君、自身ですら、女中にいないと言わせておきながらここにいるじゃないの...
吉川英治 「かんかん虫は唄う」
...最も古手で幅利(はばき)きな――そしてきのうから変った新奉行の藤吉郎に対しては...
吉川英治 「新書太閤記」
...だがもう古手な素人(しろうと)脅しの生娘漁(きむすめあさ)りやケチな悪事はよしたがいいぜ...
吉川英治 「新・水滸伝」
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