...所が丁度そう云う絶望に陥りかかった去年の秋の事である...
芥川龍之介 「さまよえる猶太人」
...去年の秋の嵐の晩に...
芥川龍之介 「鼠小僧次郎吉」
...去年の秋に散って落ちた枯葉が...
太宰治 「春の枯葉」
...去年の秋、谷崎君がわたくしの小説について長文の批評を雑誌『改造』に載せられた時、わたくしはこれに答える文をかきかけたのであるが、勢(いきおい)自作の苦心談をれいれいしく書立てるようになるので、何となく気恥かしい心持がして止(よ)してしまった...
永井荷風 「正宗谷崎両氏の批評に答う」
...去年の秋にも病気が癒(なお)った後(あと)で...
夏目漱石 「硝子戸の中」
...去年の秋の嵐に半ば崩されて...
野村胡堂 「新奇談クラブ」
...去年の秋のある日...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...それを御腰物方に納めたのは去年の秋です...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...座敷牢に入れられてゐるといふではないか」「去年の秋から...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...早く親に死に別れて、叔父の出雲屋岩太郎に引取られ、鎌倉町の店で、多勢の番頭小僧と一緒に、糠(ぬか)だらけになって働いて居りましたが、去年の秋から、馴れない俵などを担がせられた為に、今の肋膜炎――昔の所謂(いわゆる)脾腑(ひふ)を揉んで病気になり、そのままブラブラ病いになって、小梅の寮に追い払われ、暫(しばら)く養生をするということになって居たのです...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...去年の秋の大さらひの後で...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...――文中の去年の秋の出来事というのは...
堀辰雄 「木の十字架」
...去年の秋、礼奉公も済んだので、今年は暖簾(のれん)を分けてもらうことにきまっていたという...
山本周五郎 「五瓣の椿」
...去年の秋、上流の濁川が荒れて、このあたりの川床(かわどこ)もだいぶ変った...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...去年の秋あたり、日比谷、上野、小石川のバラックの裏手を夜十二時過ぎに通ると、そこにもここにも怪しい男女が蠢(うご)めいていた...
夢野久作 「東京人の堕落時代」
...兜巾(ときん)をあてた眉間(みけん)には、去年の秋以来、狙(つ)けまわしている必殺の気がみなぎっている...
吉川英治 「親鸞」
...その結果、去年の秋には、今までの出水(でみず)もそこだけは防ぎ止め、冬には土を耕し、春には苗代(なわしろ)に種子(たね)を蒔(ま)き水を引き、この初夏には、わずかながら新田に青々と稲もそよぎ、麻も麦も一尺の余も伸びていた...
吉川英治 「宮本武蔵」
...恐い、仮面(めん)のようです」「ああ……ああ……」と、江漢は、さめざめと泣くように、そう言われた自分の顔を両手で掩(おお)って――「面目ない! わしは恥かしい!法縄(ほうじょう)を司る公人として三十年、江戸与力の先輩といわれ、めでたく、公職を完(まっと)うして、去年の秋、名月の夜には、その隠退祝いをかねて、世間の人々から、捕縄供養までして貰った身であるのに、その塙江漢が、今宵(こよい)という今宵ばかりは、闇夜の鳥も同様、眼も見えねば、心も見えぬ...
吉川英治 「牢獄の花嫁」
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