...その歌の巧拙は姑(しばら)く措(お)いても、その声のキメの細かさ、緻密(ちみつ)さ、匂やかさ、そうして、丁度刀を鍛える時に、地金を折り返しては打ち、折り返しては練ったあとのような何とも言えぬ頼もしいねばり強さと、奥深さとに驚嘆した...
高村光太郎 「触覚の世界」
...しかも二十六歳の匂やかな若さを...
橘外男 「陰獣トリステサ」
...彼女の匂やかな胸や露わな頸筋が挑むように絡わり舞っていた...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「頸の上のアンナ」
...もっと匂やかな艶がありはしなかったか? 空気の中にも...
中島敦 「プウルの傍で」
...匂やかな朱唇があるかなしに動いただけで...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「狂人日記」
...あの黒紐のやうに匂やかに...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...得もいわれぬ優しい匂やかなばら色の光が...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トニオ・クレエゲル」
...白っぽい匂やかな服を着てはいるが...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トニオ・クレエゲル」
...むしろ匂やかにすがすがしい感じであった...
山本周五郎 「薊」
...すんなりとまるみをもって匂やかにまでなまめかしかった...
山本周五郎 「お繁」
...あどけないほど柔軟で匂やかな嬌(なま)めかしさをもっていた...
山本周五郎 「つばくろ」
...いまはそのうえに娘らしい匂やかな艶(つや)と...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...匂やかに、ややなまめいた微笑であった、柔らかそうな唇のあいだから黒く染めた歯のちらと覗くのを、おせんは痛いほどはっきりと見たのである...
山本周五郎 「柳橋物語」
...匂やかな生命があふれているようにみえる...
山本周五郎 「山彦乙女」
...ときどき(千草の匂やかな躰臭を身近に感じて)ふと滝沢の宿を想い...
山本周五郎 「雪の上の霜」
...田川温泉の思い出には少しは匂やかな秘めごともあるにはある...
横光利一 「夜の靴」
...もう今の匂やかなものの通う路は断ち消えて無くなりそうな恐れも覚えて来るのだった...
横光利一 「旅愁」
...匂やかさをもつ色では...
吉川英治 「折々の記」
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