...もっともこの声と云うのも、何と云っているのだか、言葉は皆目(かいもく)わからないのですが、とにかく勢いの好い泰さんの声とは正反対に、鼻へかかった、力のない、喘(あえ)ぐような、まだるい声が、ちょうど陰と日向(ひなた)とのように泰さんの饒舌(しゃべ)って行く間を縫って、受話器の底へ流れこむのです...
芥川龍之介 「妖婆」
...ハンドブツクと雖も決して吾人を啓發する力のないものではない...
阿部次郎 「三太郎の日記 第二」
...明細な批判を下す能力のないものこそ...
阿部次郎 「三太郎の日記 第二」
...怨嗟(えんさ)の情が動いておっても口にいうべき力のないはかない怨(うら)みだ...
伊藤左千夫 「去年」
...力のない細い声で...
伊藤左千夫 「浜菊」
...力のない声で笑った...
谷崎潤一郎 「武州公秘話」
...」と力のない返事でした...
土田耕平 「時男さんのこと」
...力のない微笑と一緒に軽い洒落も出た...
徳田秋声 「黴」
...自覚する力のないものほど危っかしいものはないのである...
戸坂潤 「世界の一環としての日本」
...間の抜けた力のない音でボンボンと鳴り出すのを聞きつけ...
永井荷風 「男ごゝろ」
...想像力のない浅井君はとんと結果を予想し得ない...
夏目漱石 「虞美人草」
...お倉に比べると一向魅力のない大年増が...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...大した力のない人間に...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...力のない足どりで歩きだした...
火野葦平 「花と龍」
...「どうぞ――御なぶりなさらないで……」男は前よりも一層力のない声で□((一字不明))った...
宮本百合子 「お女郎蜘蛛」
...力のない感じの方で生活を計っているから御安心下さい...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...彼は王侯貴族が力のない人民に加える残虐をこそ憤っている...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...力のない手付きで襟(カラ)を引っぱって...
夢野久作 「暗黒公使」
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