...もっともこの声と云うのも、何と云っているのだか、言葉は皆目(かいもく)わからないのですが、とにかく勢いの好い泰さんの声とは正反対に、鼻へかかった、力のない、喘(あえ)ぐような、まだるい声が、ちょうど陰と日向(ひなた)とのように泰さんの饒舌(しゃべ)って行く間を縫って、受話器の底へ流れこむのです...
芥川龍之介 「妖婆」
...そういう破目(はめ)になると葉子は存外力のない自分であるのを知らねばならなかった...
有島武郎 「或る女」
...とにかく今日は考える力のない妾だったから...
海野十三 「三人の双生児」
...そこには自活力のない不具者を広く収容して...
江戸川乱歩 「孤島の鬼」
...すぐ力のない悲しそうな眼になった...
田中貢太郎 「牡丹燈記」
...力のないぐつたりした樣子をしてゐた...
田村俊子 「木乃伊の口紅」
...力のない赤子の啼(な)き声が聞えて...
徳田秋声 「新世帯」
...外の世界の強い刺戟に痛みを覚えるような力のない目を庭へ見据えていた...
徳田秋声 「黴」
...力のない咳が彼の耳をコホンコホンと打った...
富ノ沢麟太郎 「あめんちあ」
...吾らごときものの一喜一憂は無意味と云わんほどに勢力のないという事実に気がつかずにはいられない...
夏目漱石 「思い出す事など」
...僕はただなす能力のない手を拱(こま)ぬいて...
夏目漱石 「彼岸過迄」
...おれは力のない狼狽と...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「道化者」
...彼は王侯貴族が力のない人民に加える残虐をこそ憤っている...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...細い力のない溜息(ためいき)をついた...
山本周五郎 「季節のない街」
...力のない声で云った...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...彼女(かのじょ)は力のない四肢(し)をグッタリとのばしていた...
吉川英治 「神州天馬侠」
...この最も腕力のない年寄りの敵対行為であった...
吉川英治 「宮本武蔵」
...弁済する能力のない債務者について...
ルナアル Jules Renard 岸田国士訳 「ぶどう畑のぶどう作り」
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