...「どうだね、お前にゃ見覚えはねえかい」女房はそわそわと落ち付かぬ容子をして、亭主と同じように切(しき)りに思い出そうとしていたが、出し抜けに、囁くような声でこう云った...
モオパッサン 秋田滋訳 「親ごころ」
...何をそんなに考えているの」お増が出し抜けに後からそいって...
伊藤左千夫 「野菊の墓」
...列車は出し抜けに止められたが...
江戸川乱歩 「一枚の切符」
...夜が明けると象は出し抜けに街に舞い戻ってきた...
ジョージ・オーウェル George Orwell The Creative CAT 訳 「象を撃つ」
...両方が無言で、相手の悪さの証拠固めをしているような危険、一枚の札(ふだ)をちらと見ては伏せ、また一枚ちらと見ては伏せ、いつか、出し抜けに、さあ出来ましたと札をそろえて眼前にひろげられるような危険、それが夫婦を互いに遠慮深くさせていたと言って言えないところが無いでも無かった...
太宰治 「桜桃」
...……私も、無理な話だと思っていたわ」その頃、師匠さんは軽井沢の別荘のほうにいらしたので、そのお別荘へお断りの御返事をさし上げたら、それから、二日目に、その手紙と行きちがいに、師匠さんご自身、伊豆の温泉へ仕事に来た途中でちょっと立ち寄らせていただきましたとおっしゃって、私の返事の事は何もご存じでなく、出し抜けに、この山荘にお見えになったのです...
太宰治 「斜陽」
...ほとんど戦々兢々(せんせんきょうきょう)たる態度で私たちに望むから、どうしたのかと思っていると、やがて、出し抜けに、日露戦争に勝ってくれてまことに有難いという...
谷譲次 「踊る地平線」
...兄さんは時々普通の人に解らないような事を出し抜けに云います...
夏目漱石 「行人」
...なぜわたくしは今日あなたに出し抜けに手紙を上げようと決心いたしたのでしょう...
マルセル・プレヴォー Marcel Prevost 森鴎外訳 「田舎」
...それから出し抜けに私は...
堀辰雄 「風立ちぬ」
...背筋のぴんと伸びた痩せた男が出し抜けに入ってきた...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「諜報部」
...出し抜けにあらわれたか...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...出し抜けにこんな事を仰ゃるのですもの...
ライネル・マリア・リルケ Rainer Maria Rilke 森鴎外訳 「家常茶飯」
...さて青年がいつものやうに熱情を見せさうになつて来ると、女が出し抜けに、どうも余り興奮した為めか、ひどく疲れてゐるから、赦(ゆる)して貰ひたいと云つて、青年の切に願ふのを聞かずに、いつもの時刻よりずつと早く飛び出して帰つた...
アルベエル・サマン Albert Samain 森林太郎訳 「クサンチス」
...あなたが出し抜けにわたくしの側へ現れておいでなすったのですね...
モルナール・フェレンツ Molnar Ferenc 森鴎外訳 「辻馬車」
...もし出し抜けに死んでしまうと...
シュニッツレル Arthur Schnitzler 森鴎外訳 「みれん」
...美留女姫が出し抜けに奇妙な事を頼んだのに驚いたと見えて...
夢野久作 「白髪小僧」
...」と出し抜けに声がする...
吉江喬松 「木曾御嶽の両面」
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