...まるでそれが永久に成功しない事でも祈るやうな冷酷な眼で眺めてゐた...
芥川龍之介 「蜜柑」
...時には其生活の方法にまで冷酷なる制限と迫害とを加へたに拘はらず...
石川啄木 「所謂今度の事」
...天が自分に示して呉れる最も冷酷なる滑稽の一であらうなどと考へた...
石川啄木 「葬列」
...永久なる眠りも冷酷なる静かさも...
伊藤左千夫 「奈々子」
...商売女でもない奈世に手管(てくだ)を求めるのも無理とは知っているし、わしだけしか知らぬ奈世に男と女の歓びを、顔や体に現わすように要求するのも、これ又、無理なことではあろうけれど、他の女達はそうでもなかったのに、奈世だけは不思議に眉一つ、頬一つ崩さず、白い顔を斜めに向け眼を軽く閉じたまま、しんと静まりかえって、やがて、弱々しく、わしが身を引くまで、冷酷な商売女か、人形の様に身を任かせて居た...
富田常雄 「面」
...其の正義人道に對する思想の冷酷なる...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...私が冷酷なからであろうか...
豊島与志雄 「小さき花にも」
...A女――田宮さんてずいぶん冷酷なかたね...
豊島与志雄 「山吹の花」
...丹波高一の冷酷な事務的な言葉を聞いてさすがに顫(ふる)え上りました...
野村胡堂 「踊る美人像」
...この冷酷なる没人情の氷山では...
萩原朔太郎 「詩の原理」
...彼はもし、高等海員になってやや多い収入を得ないならば、山陰道(さんいんどう)の山中で、冷酷な自然と、惨忍なる搾取との迫害から、その僻村(へきそん)全体が寒さのために凍死し、飢餓のために餓死しなければならないのであった...
葉山嘉樹 「海に生くる人々」
...恰も冷酷な情夫を罵しるかのやうに激しく...
牧野信一 「小川の流れ」
...おそるべき冷酷な辛辣な眼つきと口調とでこういった...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トビアス・ミンデルニッケル」
...「そんな冷酷な扱いを受けてもまだ辛抱(しんぼう)強くあなたはしているのですか...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...原田甲斐が冷酷な人間だと云ったとすれば...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...冷酷な調子で云った...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...冷酷な鉄窓裡(てっそうり)に呻吟し...
モウリス・ルブラン 新青年編輯局訳 「水晶の栓」
...愛なく情なく血なく肉なくしてただ黄金にのみ執着する獰猛なスクルジは過去現在未来の幽霊に引っ張り回されて一夜の間に昔の夢のようなホームの楽しさと冷酷なる今と身近く迫れる暗き死の領とを痛切に見せられた...
和辻哲郎 「霊的本能主義」
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