...博士はまた八つ当りの体(てい)たらくとなり...
海野十三 「時限爆弾奇譚」
...たった今、俺にお辞儀をした刑事が、八つ当りの声で、「トランクをあけろ」船で釜山(ふざん)へ渡り、京城行きの汽車に乗った...
高見順 「いやな感じ」
...」とつひに八つ当りの論法に変じた...
太宰治 「お伽草紙」
...という八つ当りの気持だった...
太宰治 「佳日」
...八つ当りしてヤケ酒を飲みたくなって来たのである...
太宰治 「十五年間」
...ぶん殴ってやろうかとも思うのだが、隠居座敷の老夫婦は、嫁の悋気がはじまるともう嬉(うれ)しくてたまらないらしく、老夫婦とも母屋(おもや)まで這(は)い出して来て、うふふと笑いながら、まあまあ、などといい加減な仲裁をして、そうして惚(ほ)れ惚(ぼ)れと嫁の顔を眺(なが)める仕末なので、ぶん殴るわけにもいかず、さりとて、肥桶をかついで遊びに出掛けるのも馬鹿々々しく思われ、腹いせに銭湯に出かけて、眼まいがするほど永く湯槽(ゆぶね)にひたって、よろめいて出て、世の中にお湯銭くらい安いものはない、今夜あそびに出掛けたら、どうしたって一両失う、お湯に酔うのも茶屋酒に酔うのも結局は同じ事さ、とわけのわからぬ負け惜しみの屁理窟(へりくつ)をつけて痩我慢(やせがまん)の胸をさすり、家へ帰って一合の晩酌(ばんしゃく)を女房の顔を見ないようにしてうつむいて飲み、どうにも面白(おもしろ)くないので、やけくそに大めしをくらって、ごろりと寝ころび、出入りの植木屋の太吉爺(たきちじい)を呼んで、美作の国の七不思議を語らせ、それはもう五十ぺんも聞いているので、腕まくらしてきょろきょろと天井板を眺めて別の事を考え、不意に思いついたように小間使いを呼んで足をもませ、女房の顔を見ると、むらむらっとして来て、おい、茶を持って来い、とつっけんどんに言いつけ、女房に茶碗(ちゃわん)をささげ持たせたまま、自分はやはり寝ながら頭を少しもたげ、手も出さずにごくごく飲んで、熱い、とこごとを言い、八つ当りしても、大将が夜遊びさえしなければ家の中は丸くおさまり、隠居はくすくす笑いながら宵(よい)から楽寝、召使いの者たちも、将軍内にいらっしゃるとて緊張して、ちょっと叔母のところへと怪しい外出をする丁稚(でっち)もなく、裏の井戸端(いどばた)で誰を待つやらうろうろする女中もない...
太宰治 「新釈諸国噺」
...八つ当りの不機嫌(ふきげん)で...
太宰治 「新釈諸国噺」
...旅順が落ちないばかりのむしゃくしゃの八つ当りであの夜...
太宰治 「惜別」
...津田氏がこんどの問題をなぜ私のところへ持ち込んで何のかのと支離滅裂な八つ当りの言辞を弄(ろう)し騒ぎ立てているのか...
太宰治 「惜別」
...とまるで八つ当りのお説教をするのでございます...
太宰治 「男女同権」
...ついには相手かまわずの八つ当りとなってしまいました...
中里介山 「大菩薩峠」
...鎧扉に八つ当りをし...
久生十蘭 「だいこん」
...(お京の手紙から八つ当りかも知れん)と...
火野葦平 「花と龍」
...して見ると苦しい時の八つ当りに家族の者を叱りつけるなどは余一人ではないと見える...
正岡子規 「病牀六尺」
...その乱暴は単なる八つ当りではなく...
山本周五郎 「赤ひげ診療譚」
...八つ当りをしたんだろう...
山本周五郎 「さぶ」
...野口の師範であるこっちにまで八つ当りをしたに相違ない...
山本周五郎 「花も刀も」
...飲めば八つ当りをするというわけなのよ」「貴女(あなた)は武家出なんですか」「ええそう...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
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