...やっと命を全うしたのは二十前後の息子だけだった...
芥川龍之介 「本所両国」
...それとも蛇命を全うして蛙を呑み了りたるか...
大町桂月 「秋の筑波山」
...敗れてこの窟に隱れて身を全うしたりとの事也...
大町桂月 「鹽原新七不思議」
...かゝる山川になほ水の樂みを全うする能はざるも...
大町桂月 「八鹽のいでゆ」
...或はもつと天然の寿を全うし得たかも知れない...
高村光太郎 「智恵子抄」
...爾の權利を全うせよと...
高山樗牛 「美的生活を論ず」
...瓦と為りて全うする勿(なか)れ」と...
徳富蘇峰 「吉田松陰」
...政變は必らず彼れの歸朝後に起る可きを豫想したりき果然彼の歸朝と共に一個の公問題は政變の前驅となり出でたりき曰く大隈を外務に入れ松方を大藏に擧ぐるは戰後に經營を全うする刻下の急要なりと而して彼は此問題の發議者として數へらるゝのみならず...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...未だ天寿を全うせずして十年前に病死したる人なり...
鳥谷部春汀 「明治人物月旦(抄)」
...良き縁もあらば片づきて身を全うせよと言聞かせ置きしが...
永井荷風 「断腸亭日乗」
...この山の娘たちによって隠され保護されて一身を全うしたという説は...
中里介山 「大菩薩峠」
...己れの義務を全うした人には...
新渡戸稲造 「「死」の問題に対して」
...辛うじてその存在を全うしているのである...
新渡戸稲造 「デモクラシーの要素」
...配偶の大倫(たいりん)を全うすること能(あた)わずして...
福沢諭吉 「日本男子論」
...かかる間に猟師余すところの虎の子供を全うして船に乗る...
南方熊楠 「十二支考」
...渠は此の如くにして理(せふり)の任を全うした...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...水ももらさぬ皇軍のたたかひが全うされようとも...
吉川英治 「折々の記」
...五ちょっと、言葉をきって、美少年はその眸に、雲のかげを映(うつ)し、何か感慨に耽(ふけ)っていたが、「――けれどその鐘巻先生も、昨年、大寿を全うして、ご病死なされてしまった」呟(つぶや)くようにいい、「私は、周防にあって、同門の草薙天鬼(くさなぎてんき)から、その報(し)らせをうけた時、師恩に感泣しました――師の病床についていた草薙天鬼、それは私よりもずっと先輩だし、また、師の自斎とは叔父甥(おい)の血縁でもあるのですが、その者には、印可を与えずに、遠く離れている私を思ってくれて、生前に、印可目録を書き遺(のこ)して、一目会って、手ずから私に与えたいと申されたそうであります」眸がうるんで来て、今にも涙のこぼれそうな眼になる...
吉川英治 「宮本武蔵」
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