...その日も、私は、市川の駅へふらと下車して、兄いもうと、という活動写真を見もてゆくにしたがい、そろそろ自身狼狽(ろうばい)、歯くいしばっても歔欷(きょき)の声、そのうちに大声出そうで、出そうで、小屋からまろび出て、思いのたけ泣いて泣いて泣いてから考えた...
太宰治 「二十世紀旗手」
...兄いさんは学士になつて...
オイゲン・チリコフ Evgenii Nikolaevich Chirikov 森林太郎訳 「板ばさみ」
...「昨夜(ゆうべ)兄いさんが来たわよ...
徳田秋声 「のらもの」
...「兄い、不寝番(ねずのばん)かい、御苦労だな」と言いました...
中里介山 「大菩薩峠」
...「でえだらぼっちがこの八幡様へ喧嘩をしかけに来るんだそうだ、それで八幡様のお庭を明るくしておけと神主様の言いつけだ、だからこうして不寝番をして、時々燈籠へ油を差して歩くんだ」米友はワザワザ申しわけのように言っていると、「なるほど、それは御苦労さまだ、油を差すのはいいが、油を売っちゃいけねえよ」「ばかにしてやがら、油なんぞを売るものか」「それでも今、コクリコクリとやっていたじゃあねえか、あんなときにでえだらぼっちがやって来たらどうする」「そりゃあ、コクリコクリやっていたって、了簡(りょうけん)は眠っちゃあいねえんだ、眼は眠っても心は眠らねえから、誰がどこへ来たということもちゃんとわかる」「えらい」と言って米友を煽(おだ)てた仲間体の男は、いい気になって、米友がいま持って歩いた床几(しょうぎ)の上へ腰を卸(おろ)してしまい、「兄い、睡気ざましに一口湿(しめ)してみちゃどうだ、いい酒だぜ」と言って、傍へ置いた貧之徳利を取り上げて少しく振って試み、それから懐中へ手を入れて経木皮包(きょうぎがわづつみ)を一箇取り出しましたが、こんなことをしている間にも、どうやら外の通りを気にかけている様子であります...
中里介山 「大菩薩峠」
...七兵衛兄いなんぞに聞かせようものなら...
中里介山 「大菩薩峠」
...またおいで――誰か友兄いに落雁(らくがん)をおやりよ」「はい...
中里介山 「大菩薩峠」
...安直兄いでありました...
中里介山 「大菩薩峠」
...「下駄っかけの兄い...
中里介山 「大菩薩峠」
...地から湧いたか」「丁馬親分――安直兄い...
中里介山 「大菩薩峠」
...「兄い、どうだ、行く気ぁねえか、いい銭になるぜ、洛北の岩倉村に前代未聞(ぜんでえみもん)の大賭場があるんだから行かねえか」同じようなことを繰返して、今度は、ひたと自分の眼の前へ足を踏みつけて突立ち止っての直接談判(じかだんぱん)だから、もう思案の問題ではありません...
中里介山 「大菩薩峠」
...今までは宇治山田の兄いに肖過(にす)ぎるほど肖ていたのが...
中里介山 「大菩薩峠」
...「何がどうしたと言ふんだ」「辰五郎兄いを助けるつもりで働いて下さるのは有難いが...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...お兄いさんに一升買へえ...
三木竹二 「いがみの権太」
...文芸懇話会賞というものをその作「兄いもうと」に対しておくられた室生犀星氏は...
宮本百合子 「明日の言葉」
...兄いさんのを傍へ引っ附けて立てて...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...すぐに親方とか兄いとかにあおいだ...
夢野久作 「街頭から見た新東京の裏面」
...仁三兄い――」と声を立てた連中も...
吉川英治 「江戸三国志」
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