...僅かに昼夜を弁ずるのみなれば詮方(せんかた)なくて机を退け筆を投げ捨てて嘆息の余りに「ながらふるかひこそなけれ見えずなりし書巻川(ふみまきがは)に猶わたる世は」と詠じたという一節がある...
内田魯庵 「八犬伝談余」
...僅少なる養老費あるを以て安堵して孫輩(まごら)の顔を眺めて楽みとし...
関寛 「関牧塲創業記事」
...かりに五円の売上げと見積って一ヶ月の利益僅か十五円に過ぎぬ...
相馬愛蔵 「私の小売商道」
...僅か三日を過したるだに思いは千年萬年を暮らすに似たり...
谷崎潤一郎 「三人法師」
...僅かながらの正月の仕度...
豊島与志雄 「好意」
...僅(わず)か四、五人しか弟子はいないが、彼らはいずれも師の歩みに倣(なろ)うて、自然の秘鑰(ひやく)を探究する者どもであった...
中島敦 「悟浄出世」
...「然し事情といふものはすつかり自分を弱くしてしまふもんだからな」若い醫者の顏には此時僅かながら苦痛が浮んだ...
長塚節 「開業醫」
...積(つ)んだ蒲團(ふとん)に倚(よ)り掛(かゝ)つて僅(わづか)に切(せつ)ない呼吸(いき)をついて居(ゐ)た...
長塚節 「土」
...僅々(きんきん)六週間で作曲したという...
野村胡堂 「楽聖物語」
...「――――」小さい――血の気のうせた唇が僅かに動きます...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...僅かに光る鐵色の針の頭を見て...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...どいつもこいつも僅かな端た銭のために...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...僅に接し得る外界...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...氏はわれわれが外国語で発表した僅少の資料に基づいて調査されたのでも幾らか独創のものが見いだされたのであるから...
三上義夫 「文化史上より見たる日本の数学」
...僅かばかりでもお米がとれるようになりやしてね...
三好十郎 「樹氷」
...蘭軒の集中には僅に四首の詩を存してゐて...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...それはほんの僅かなあいだのことで...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...雪に隠れるほど摩滅した形なき廃墟まで僅か数歩で...
H. P. ラヴクラフト H.P.Lovecraft The Creative CAT 訳 「狂気の山脈にて」
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