...何の因果か百合枝さん...
江戸川乱歩 「一寸法師」
...拙老此(こ)の歳に及び斯(か)かる憂きことを耳にいたし候は何の因果かと悲歎やる方なく候...
谷崎潤一郎 「蓼喰う虫」
...「………『斯(か)かる憂きことを耳にいたし候は何の因果かと悲歎やる方なく』か...
谷崎潤一郎 「蓼喰う虫」
...「あなた様なんぞもお若いに……穀屋の後家さんがいなさらん時分においでだからいいもんの、夏うちなら食われてしまいましたぜ、なんしろ十五から六十まで、油っ気のある男なら、イヤと言わないで、一日に二人ぐらいは食べたおばけですもんな」それでいて、何の因果か、浅公だけは離れられずに通したのは、後家さんが浅公に何か弱点を握られているせいだともいうし、浅公の方で、後家さんの油っこいのに離れられないのだともいうし、後家さんは浅公を、振って振って振り通しながら、それでも番頭代りに打捨(うっちゃ)れないで、おもちゃにしていたが、その浅公を前に置いて、思うさまふざけた真似をして見せたが、浅公泣きながら、その圧制に甘んじていたこと――そこで四十男はいい気になって、もう少し調子を進め、浅公に対しての淫乱後家の虐待ぶりのいかに徹底的であったかをも、手に取るように解剖をはじめたものだから、これには、さすがの聞き手も、面(かお)をそむけながら苦笑いをする...
中里介山 「大菩薩峠」
...何の因果か、この原生動物と覚しきが、三十年の昔、姿を現わして以来、この形のうつしが一代の流行を極めて、出るわ、出るわ、頭巾をかぶせたり、五分月代(ごぶさかやき)を生やさせたり、黒の紋附を着流させたり、朝日映画子のいわゆる浅薄陳腐な嫌味ったらしい化け物が、これでもか、これでもかと、凄くもない目をむき出し、切れもしない刀を振り廻して見得(みえ)を切った、その嫌味ったらしい浅薄陳腐な化け物が、三十年の今日、箱根以東の大江戸の巷(ちまた)から完全に姿を消してはいない...
中里介山 「大菩薩峠」
...どちらも同じ学校出の二十八歳、どちらも社長のお覚え目出度(めでた)かったのですが、何の因果か、二人はたった一人の女――社長の娘の美奈子(みなこ)というのを恋するようになって、ここに才人と努力家と、醜男と美男子と、偶然家と漸進(ぜんしん)家との、命をかけての争いが始まることになったのでした...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...「何の因果か、俺には物を盗まずにいられねえ病気があるんだ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...何の因果か、菊之助の女房のこのお粂に誘われて――」「お黙り...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...何の因果か赤くて縮れた毛を持っているので有名だったのです...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...三輪の兄哥は三輪の兄哥、俺は俺だ」「人柄が違い過ぎる――って世間でも言いますよ」「止さないか、馬鹿野郎」「へッ、へッ、へッ、何の因果か、その馬鹿野郎ッ――があっしの大好物で、親分にそうやられると、胸がスーッとしますよ...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...三十七の男盛りで、何の因果か、伊勢新は全く好い男振りでしたよ」「…………」「故郷の伊勢へ帰った時は、鳥羽(とば)へ遊びに行って、松風村雨(まつかぜむらさめ)気取りの海女(あま)姉妹を手に入れ、さんざん弄(もてあそ)んだ挙句、江戸まで跟(つ)いて来られ、一と騒ぎやったとか、――箱根の湯女(ゆな)に追っかけられて、命からがら江戸へ逃げ帰ったとか、独り者の気楽さも手伝って、底も果てもない放埒(ほうらつ)でした」「それが、厄介なことに楊弓(ようきゅう)、賭(か)け碁(ご)、釣と、女道楽の片手間にやります...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...何の因果か二つの疾(やま)いがあった...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...あのやうな狸の忘れられぬは何の因果かと胸の中かき廻されるやうなるに...
樋口一葉 「にごりえ」
...あのやうな狸(たぬき)の忘れられぬは何の因果かと胸の中かき廻されるやうなるに...
樋口一葉 「にごりえ」
...コン吉は何の因果か...
久生十蘭 「ノンシャラン道中記」
...何の魅力か? 何の因果か? 何時何処のステーシヨンで僕は斯んなタヴレツトをうけとつてしまつたんだらう...
牧野信一 「日記より」
...何の因果か太郎、元来、蛇が好きで、いつもニョロニョロ生きたのを楽屋へ携帯、一夜、どこかの寄席でこれが客席へ這い出したので、たちまちに女子供は阿鼻叫喚...
正岡容 「艶色落語講談鑑賞」
...何の因果か二人も揃うて...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
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