...今は昔と違つてな...
石川啄木 「我等の一團と彼」
...われは、カルメル山(ざん)に孤雲を望む牧人の心となりて、君が御爲(おんため)にやをら美(うつく)しき一條(いちでう)の歌を捧げむ、時これ十二月寒(かん)の土用に際して、萬物(ばんぶつ)の結目(むすびめ)は縮(ちゞ)まり竦(すく)み、夜天(やてん)に星斗(せいと)闌干(らんかん)たれど、歡喜の心、逸散(いつさん)にわが身を撞(つ)きて、今は昔、カヤパス、アンナ大司祭たり、ヘロデは、ガリレヤに、弟ピリポ、イツリヤとトラコニチスとに、リサニヤスはアビレナに分封(わけもち)の王(きみ)たりし世、荒野(あれの)のヨハネに御言葉(みことば)の降(くだ)りし時の如し...
ポオル・クロオデル Paul Claudel 上田敏訳 「頌歌」
...唐人髷に結つた中型のお七帶かなんかをしめた下町娘が小走りに、明石町から箱崎の方へ橋を渡つてゆく風景は、今は昔です...
竹久夢二 「砂がき」
...今は昔の面影も残っていないそうである...
中谷宇吉郎 「寅彦の遺跡」
...恋の日春の名残(なごり)の暮るる日に紅き花さへ惜みたり夕べ 畑で恋人を待ちしも今は昔なり夏のをはりに露草の白き花さへ惜みたり河原の岸で恋人と泣きしも今は昔なり...
野口雨情 「別後」
...今は昔互いに睦(むつ)み親しみつつ旦暮(あけくれ)訪(と)いつ訪われつ教えを受けし事さえ多かりしを懐(おも)い...
福田英子 「妾の半生涯」
...今は昔、昔は今と、即ちワンス、アツポン、エ、タイム、そこに一艘の船があつた...
牧野信一 「不思議な船」
...今は昔、そこにゐる潜水夫のうちで、太海(ふとみ)今太郎(いまたらう)といふ少年潜水夫がゐました...
宮原晃一郎 「動く海底」
...今は昔となった若い頃の回想に耽る...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...それに尚(しょう)侯邸も今は昔語りかと思うと...
柳宗悦 「沖縄の思い出」
...時遷(うつ)って今は昔語りとなってしまいました...
柳宗悦 「手仕事の日本」
...いわんやわが九百年前の先輩(せんぱい)『今昔物語』のごときはその当時にありてすでに今は昔の話なりしに反しこれはこれ目前の出来事なり...
柳田国男 「遠野物語」
...今は昔と意味が逆になっている...
柳田国男 「木綿以前の事」
...是も今は昔、或る一人の親族の老女に教えられたのは、煙管(キセル)で吸っていると時々何とも言えぬくらい、甘くておいしいことがある...
柳田国男 「木綿以前の事」
...こうした悠長な仕事が商売になったのも今は昔...
山本笑月 「明治世相百話」
...こんな喜劇が随所に見られたのも今は昔のお笑い草...
山本笑月 「明治世相百話」
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横瀬夜雨 「花守」
...一話ごとに『今は昔』と云ふ冒頭を置いてある處から...
和田萬吉 「父兄の方々に」
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