...で、お定も急がしく萌黄(もえぎ)の大風呂敷を拡げて、手廻りの物を集め出したが、衣服といつても唯(たつた)六七枚、帯も二筋、娘心には色々と不満があつて、この袷は少し老(ふ)けてゐるとか、此袖口が余り開き過ぎてゐるとか、密々話(ひそひそばなし)に小一時間もかゝつて、漸々(やうやう)準備が出来た...
石川啄木 「天鵞絨」
...辻俥(つじぐるま)の蹴込(けこみ)へ、ドンと積んで、山塞(さんさい)の中坂を乗下ろし、三崎町(ちょう)の原を切って、水道橋から壱岐殿坂(いきどのざか)へ、ありゃありゃと、俥夫(くるまや)と矢声を合わせ、切通(きりどおし)あたりになると、社中随一のハイカラで、鼻めがねを掛けている、中(ちゅう)山高、洋服の小説家に、天保銭の翼(はね)が生えた、緡束(さしたば)を両手に、二筋振って、きおいで左右へ捌(さば)いた形は、空を飛んで翔(か)けるがごとし...
泉鏡花 「薄紅梅」
...二筋の暖簾が垂れてゐた...
田中貢太郎 「蛾」
...――酒呑喜べ上戸党万歳!……たゞこの二筋につながる...
種田山頭火 「行乞記」
...道は二筋に分れていた...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「接吻」
...それはうねうねとしてる二筋の縄で...
豊島与志雄 「悪夢」
...年増めいた二筋の皺がより...
豊島与志雄 「水甕」
...狭い額(ひたい)には二筋深い皺(しわ)が寄っている...
永井荷風 「雪解」
...この腕に二筋の入墨がございます...
中里介山 「大菩薩峠」
...小さいながら川流れが二筋に分れて...
中里介山 「大菩薩峠」
...二筋三筋扇頭(せんとう)の微風に戦(そよ)いで頬(ほお)の辺(あたり)を往来するところは...
二葉亭四迷 「浮雲」
...文学上の流れが今日は一人のひとのうちに二筋に流れているようなところや...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...そこには軌道が二筋ずつ四つか五つか並べて敷いてある...
シュミットボン Willhelm Schmidt-Bonn 森鴎外訳 「鴉」
...さうなれば此國へ渡つて來る海路は一筋か二筋...
柳田國男 「蒼海を望みて思ふ」
...一筋(ひとすじ)二筋の白い煙が細々と立っていた...
柳田国男 「山の人生」
...裏門から出ると道は二筋に岐(わか)れている...
山本周五郎 「風流太平記」
...乳母車は大抵長い外套を着て頭から裾迄大幅のリボンを二筋垂れた一定の服装の褓母(ほぼ)が押して居る...
與謝野寛、與謝野晶子 「巴里より」
...道は二筋しかねえ...
吉川英治 「宮本武蔵」
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