...時々起きる理由のない不透明な不安も...
梅崎春生 「黄色い日日」
...不透明な膜の向うに感じ続けていたのだ...
梅崎春生 「蜆」
...けれども、どうも、それから後は、暗い、と申しても言ひ過ぎで、御ところには陽気な笑声も起り、御酒宴、お花見、お歌会など絶える事もなく行はれて居りましたが、どこやら奇妙な、おそろしいものの気配が、何一つ実体はないのに、それでもなんだか、いやな、灰色のものの影が、御ところの内外にうろついてゐるやうに思はれて、時々ゆゑ知らず、ぞつとする事などもございまして、その不透明な、いまはしい、不安な物の影が年一年と、色濃くなつてまゐりまして、建保五、六年あたりから、あの悲しい承久元年にかけては、もうその訳のわからぬ不安の影が鎌倉中に充満して不快な悪臭みたいなものさへ感ぜられ、これは何か起らずにはすまぬ、驚天動地の大不祥事が起る、と御ところの人たちひとしく、口には言ひませぬけれども暗黙の裡にうなづき合つてゐたほどでございまして、人の心も解け合はず、お互ひ、これといふ理由もなしに、よそよそしく、疑ひおびえ、とてもこの建暦二年の御時勢の華やかさとは較べものにも何もならぬものでございました...
太宰治 「右大臣実朝」
...どうも私には不透明なもののように感ぜられる...
太宰治 「庭」
...奥の方に不透明な固形物の混入しているのを...
谷崎潤一郎 「陰翳礼讃」
...その室の不透明な壁と透明な窓との見分けがほとんど附かない位暗かった...
ディッケンス Dickens 森田草平訳 「クリスマス・カロル」
...反対に不透明なものでもそれが他の不透明なものの中に包まれていれば外からは「不可視」である...
寺田寅彦 「自由画稿」
...もしそこに何等かの不透明な不純物が充満しているなら...
戸坂潤 「認識論とは何か」
...あるいは遠い穴からわずかの明りがその不透明な靄(もや)の中に漂ってるのか...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...常に春信の色彩軟かき調和を慕ひて不透明なる間色(かんしょく)を用ひまた時として湖龍斎(こりゅうさい)に見るが如き淡き透明なる丹(たん)を点ず...
永井荷風 「江戸芸術論」
...自分は不透明な何物かに包まれた気分を抱いた...
夏目漱石 「行人」
...要するにそう云う事は理論上あり得るんだね」余のごとき頭脳不透明なるものは理窟(りくつ)を承(うけたま)わるより結論だけ呑み込んで置く方が簡便である...
夏目漱石 「琴のそら音」
...彼の頭脳の不透明なる事はここにも著るしくあらわれている...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...少し不透明な水が満々と湛(たた)えてあります...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...煤けた軒が不透明なあくびをしているような町だった...
林芙美子 「新版 放浪記」
...富士を見ろ富士山を見ろ北斎(ほくさい)の描いたかつてのお前の姿の中に若々しいお前の火花を見たけれど今は老い朽ちた土まんじゅうギロギロした眼をいつも空にむけているお前なぜ不透明な雪の中に逃避しているのだ烏よ風よあの白々とさえかえった富士山の肩を叩いてやれあれは銀の城ではない不幸のひそむ雪の大悲殿だ富士山よ!お前に頭をさげない女がここにひとり立っているお前を嘲笑(ちょうしょう)している女がここにいる...
林芙美子 「新版 放浪記」
...濁って不透明な群集の中から明るく透きとおるように浮き出していた...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogolj(Николай Васильевич Гоголь) 平井肇訳 「死せる魂」
...透明なのや不透明な...
山本周五郎 「山彦乙女」
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