...「只今――」そういった七瀬の声は...
直木三十五 「南国太平記」
...綱手と、深雪とが、七瀬が、旅着と、その着更のほか、白無垢まで持ち出してしまったので、新調の振袖も、総刺繍(ぬい)の打掛も、京染の帯も、惜しんでおれなかった...
直木三十五 「南国太平記」
...雛人形を、膝の上で、髪を撫でたり、襟をいじったりしていた深雪が、七瀬の声に、周章てて「お迎えに行って参じましょうか」人形を、箱の中へ入れて、じっと、眺めていた...
直木三十五 「南国太平記」
...七瀬と、綱手は、手早く、雨支度をすると「参ります」「うむ」「母上をたのむぞ」深雪は、雨の中を駈け出した...
直木三十五 「南国太平記」
...七瀬は、駕を出て「卒爾ながら――」一木は、七瀬を、睨んで立止まった...
直木三十五 「南国太平記」
...七瀬の胸を突いた...
直木三十五 「南国太平記」
...七瀬と、綱手とは、人々から聞く、二人連の侍とは、確かに、池上と兵頭にちがいなかったし、その二人を援けたのは、きっと、益満であると考えた...
直木三十五 「南国太平記」
...「二三人の小人数で――」「誰方?」と、七瀬は云ったが、自分の声のようでなかった...
直木三十五 「南国太平記」
...だが、七瀬は、すぐ、落ちついた声で「二人きりでございましたか」「御覚悟は、ござろうが、何う挨拶申し上げてよいか――」百瀬は、俯向いた...
直木三十五 「南国太平記」
...御家老へお願い致さば、五日、七日の暇は下さるであろう」百城は、こういって、七瀬に「何故、捜してはなりませぬか」「浪人者の上に、無分別な父へつきました不孝者――」「いいや、それとは、事がちがう...
直木三十五 「南国太平記」
...もし、出たなら、七瀬殿、綱手殿と共々、捜しに参ろうではござりませんか」「有難う存じまする」「生であれ、死であれ、わが子の運命を見届けるのが、人倫に外れることは、よもござりますまい」「はい」百城は、立上った...
直木三十五 「南国太平記」
...綱手は(不服どころか――嬉しゅう思いますし、兄も、聞いたなら、さぞ喜びましよう)と、思いはしたが、七瀬が、固く、月丸に対して、夫とは反対ゆえ、と、いいきっていたから(お頼み申します)とは、云えなかった...
直木三十五 「南国太平記」
...「七瀬殿のことを...
直木三十五 「南国太平記」
...矢五太夫が、廊下へ、荒い足音を立てて、自分の部屋の方へ行く、後方から、若党が、女中が――そして、行手の部屋から、女房と、その後方に、七瀬とが、出て来て「何か?」と、不安そうな表情をして、出迎えた...
直木三十五 「南国太平記」
...「綱手が」と、七瀬は叫んだ...
直木三十五 「南国太平記」
...お願い申します」七瀬は...
直木三十五 「南国太平記」
...お立ちなされませ」七瀬は...
直木三十五 「南国太平記」
...入ると、何んとなく陰気で、黒い天井に、二人の血が滲んでいるように感じられたし、薄暗い部屋の襖の向うの暗闇の中には、綱手と、七瀬とが、血塗れになって、立っているようにも感じた...
直木三十五 「南国太平記」
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