...額にかすかな一抹の蔭がありました...
豊島与志雄 「旅だち」
...だから俺にも一抹の疑念が起ろうじゃないか...
豊島与志雄 「囚われ人」
...」そして彼女は一抹の微笑を浮べた...
豊島与志雄 「非情の愛」
...島の上には一抹の白雲が斜に棚引いて一二の峰が僅に其雲に相接して居る...
長塚節 「彌彦山」
...さり気ないうちに漂う一抹の怪奇さがあります...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...江差追分(えさしおいわけ)から安来節(やすきぶし)までの港々の民謡に一抹の基調が通っているのはそのためである...
服部之総 「望郷」
...その時心を走つた一抹の寂しさがあつた...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...同時に褒めすぎることによって一抹の不安を感じさせた...
アルジャナン・ブラックウッド 森郁夫訳 「秘密礼拜式」
...一抹の誇りも持たない者なのです...
牧野信一 「鏡地獄」
...岬のあたりは一抹の滲みを引いて模糊としてゐた...
牧野信一 「環魚洞風景」
...此(この)恨は初め一抹の雲の如く我(わが)心を掠(かす)めて...
森鴎外 「舞姫」
...恐るる者にもなお一抹の希望を残せよかし...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...このことは一抹の淋(さび)しさを吾々に抱かしめる...
柳宗悦 「地方の民藝」
...そうおもう一抹の不安がぼくにはあったのである...
山之口貘 「夏向きの一夜」
...その五十幾歳を一期として死んで行く間際に当って一抹の哀愁の場面が点綴(てんてつ)されることになったのはコトワリセメて是非もない次第であった...
夢野久作 「近世快人伝」
...いや実をいえば一抹の暗雲を征旅の前途に感じますので」「ほほう? それはいかなる仔細かの」「徳は元来...
吉川英治 「三国志」
...なお一抹の不気味をのこしている...
吉川英治 「平の将門」
...岸に並ぶもろもろの山も森もすべて一抹の影を帯ぶる事なく...
若山牧水 「みなかみ紀行」
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