...其中に唯一つ一抹の白烟の帝都の空に搖曳せるあり...
大町桂月 「鹿野山」
...一抹の疑惑を懐かせられて...
豊島与志雄 「或る男の手記」
...ひどく色っぽくも皮肉にもなる眼付――それに一抹の疲れが見えるのは...
豊島与志雄 「操守」
...額にかすかな一抹の蔭がありました...
豊島与志雄 「旅だち」
...」そして彼女は一抹の微笑を浮べた...
豊島与志雄 「非情の愛」
...なにか無理なところと一抹の曇りとを彼に見出してはいたが...
豊島与志雄 「三木清を憶う」
...清緑一抹の間、點々として村落あり...
長塚節 「草津行」
...島の上には一抹の白雲が斜に棚引いて一二の峰が僅に其雲に相接して居る...
長塚節 「彌彦山」
...空の藍はようやく一抹の灰濁をおびはじめ...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...買収云云のことがまだ彼等の念頭に一抹の疑団を残して居るのであつた...
平出修 「計画」
...その調子に一抹の凄味が感ぜられる...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...同時に褒めすぎることによって一抹の不安を感じさせた...
アルジャナン・ブラックウッド 森郁夫訳 「秘密礼拜式」
...思わず胸の中を一抹の微笑が流れた...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...頼襄の生涯は猶一抹の横雲に其中腹を遮断(しやだん)せられたる山の如くなれり...
山路愛山 「頼襄を論ず」
...そうおもう一抹の不安がぼくにはあったのである...
山之口貘 「夏向きの一夜」
...一抹の魔気がこの往来へ抜けて行ったように...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
...たれもが一抹の哀憐と同情をひかれ...
吉川英治 「随筆 新平家」
...――と、小次郎には、どうしても、疑いきれないで――しかしまた、一抹の不安も、拭いきれなかった...
吉川英治 「平の将門」
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