...それ等を思い廻らしてそこに一抹の光明を発見して...
大倉※[#「火+華」、第3水準1-87-62]子 「黒猫十三」
...慌(あわただ)しい中にも妙に一抹の侘(わび)しさを私の胸に滲(し)み入らせていたが...
橘外男 「ナリン殿下への回想」
...天の一方には弦月(げんげつ)が雲間から寒い光を投げて直下の海面に一抹の真珠光を漾(ただよ)わしていた...
寺田寅彦 「札幌まで」
...一抹の疑惑を懐かせられて...
豊島与志雄 「或る男の手記」
...ある憂鬱(ゆううつ)な寛大さ、多少の倦怠(けんたい)、一抹の皮肉、穏和な良識など...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...客がそれらを払いのけて一人を選べば他の者等は直ちにけろりとして一抹の未練気も示さない...
豊島与志雄 「上海の渋面」
...ひどく色っぽくも皮肉にもなる眼付――それに一抹の疲れが見えるのは...
豊島与志雄 「操守」
...額にかすかな一抹の蔭がありました...
豊島与志雄 「旅だち」
...なぐりつけるごとき一抹の時の悪感の底に...
中井正一 「物理的集団的性格」
...わからねえ」その面(おもて)に一抹の暗雲がかかって...
中里介山 「大菩薩峠」
...島の上には一抹の白雲が斜に棚引いて一二の峰が僅に其雲に相接して居る...
長塚節 「彌彦山」
...さり気ないうちに漂う一抹の怪奇さがあります...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...場合によっては……真名古の面上は何ともいえぬ一抹の凄気がサッと流れ出す...
久生十蘭 「魔都」
...……そういう一抹の不安のないこともない私に...
堀辰雄 「ほととぎす」
...此恨は初め一抹の雲の如く我心を掠めて...
森鴎外 「舞姫」
...一抹の赤い光りがぽッと立ち昇っているのだ...
吉川英治 「剣難女難」
...なお一抹の不気味をのこしている...
吉川英治 「平の将門」
...暮れの遲い空には尚ほ一抹の微光が一片二片のありとも見えぬ薄雲のなかに美しう宿つて居る...
若山牧水 「一家」
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