...人々齡(よはひ)四十の上を一つ二つ踰(こ)えたる貴人の驚怖のあまりに氣を喪(うしな)はんとしたるを助け出だしき...
ハンス・クリスチアン・アンデルセン Hans Christian Andersen 森鴎外訳 「即興詩人」
...その結果を簡単に記すと、不思議なことに、屋内の滑かな物の表面は、悉く布様のもので拭き取った形跡があり、指紋らしいものはどこにも発見されなかったが、ただ一つ、流石にここだけは拭き忘れたのか、便所の中の白い陶器の表面に、幾つかの指紋が検出された...
江戸川乱歩 「悪魔の紋章」
...じっと一つ所を見つめたまま...
江戸川乱歩 「算盤が恋を語る話」
...たつた一つ鉢植の蘭の花をほめたきりで...
薄田泣菫 「茶話」
...小さな行燈(あんどん)一つを店先に置いて...
高村光雲 「幕末維新懐古談」
...一つを手早くポッケットに入れた...
谷崎潤一郎 「細雪」
...それにはまず物理的力学的な世界像(ウェルトビルド)を構成する要素が映画の上にいかなる形で代表されているかを考えてみるのが一つの仕事である...
寺田寅彦 「映画の世界像」
...場合を逆にして或る形而上学が例えば一つの自然科学となる時であるならば...
戸坂潤 「科学方法論」
...どうだい藤尾さん一つ...
夏目漱石 「虞美人草」
...美しい紅(くれな)いの日傘(ひがさ)が一つ見えながら...
夏目漱石 「野分」
...今一つ思ひきつて更に大膽不敵に...
野上豐一郎 「桂離宮」
...男はまるでカルルのことが今ではただ一つの自分の関心事となったといわんばかりに...
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 「火夫」
...でも一つ欠けていたのが...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「煉獄」
...例えばこの染料にする色々な材料を陳列してある参考館というものが日本には一つもない...
牧野富太郎 「植物記」
...一つの自己批判の表現としてこの戯曲の上演を許可したが...
宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
...「一つ訊くが」とやがて久兵衛が云った...
山本周五郎 「ちいさこべ」
...栄華を極めた平家の人々の没落してここに剃髪(ていはつ)している者がかなり多くある中に源氏の大将であった熊谷次郎直実(なおざね)のような人物も一つ法筵(ほうえん)の弟子として在るのであった...
吉川英治 「親鸞」
...一つになって仕舞うと...
蘭郁二郎 「夢鬼」
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