...その貝類から思いついて、二、三の人々が計画したのは民間で初めての水族館、場所は今の三友館のある一角で、鉤(かぎ)形に百余坪の平家建て、入口の作り庭に件の貝類をことごとく飾りつけ、館内はすべて岩組の海底のさま、当時漆喰(しっくい)細工の名人と知られた伊豆の長八が鏝(こて)先の腕を揮(ふる)って、さながら真物の岩窟、その両側へ所々ガラス張りの魚槽を設け、品川沖から船で海水を運んで放養したのは、鯛、黒鯛を始め、河豚(ふぐ)、コチ、アナゴ、マンボウなど海魚の数々...
山本笑月 「明治世相百話」
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