...縦横にむちの血の川を描いた巨大なおしりと、その上に重なっているだんだら染めの大きな桃のようなおしりとが、弾力ではずみ、ゆらぎ震えて、眼前一尺の近さを通りすぎた...
江戸川乱歩 「影男」
...ひとづまあえかなる笑(ゑみ)や、濃青(こあを)の天(あま)つそら、君(きみ)が眼(め)ざしの日(ひ)のぬるみ、寂(さび)しき胸(むね)の末枯野(くたらの)につと明(あか)らめば、ありし世(よ)の日(ひ)ぞ散(ち)りしきし落葉樹(おちばぎ)は、また若(わか)やぎの新青葉(にひあをば)枝(えだ)に芽(め)ぐみて、歡喜(よろこび)の、はた悲愁(かなしび)のかげひなた、戯(あざ)るる木間(こま)のした路(みち)に、美(うま)し涙(なみだ)の雨滴(あまじた)り、けはひ靜(しづ)かにしたたりつ、蹠(あなうら)やはき『妖惑(まよはし)』の風(かぜ)おとなへば、ここかしこ、『追懷(おもひで)』の花(はな)淡(あは)じろく、ほのめきゆらぎ、『囁(さゝや)き』の色(いろ)は唐棣(はねず)に、『接吻(くちづけ)』のうまし香(かをり)は霧(きり)の如(ごと)、くゆり靡(なび)きて、夢幻(まぼろし)の春(はる)あたたかに、醉(ゑひ)ごこち、あくがれまどふ束(つか)の間(ま)を、あなうら悲(がな)し、優(やさ)まみの日(ひ)ざしは頓(とみ)に、日曇(ひなぐも)り、『現(うつ)し心(ごゝろ)』の風(かぜ)あれて、花(はな)はしをれぬ、蘗(ひこば)えし青葉(あをば)は落(お)ちぬ、立枯(たちがれ)の木(こ)しげき路(みち)よ、ありし世(よ)の事榮(ことばえ)の日(ひ)は、はららかにそそ走(はし)りゆき、鷺脚(さぎあし)の『嘆(なげ)き』ぞ、ひとり青(あを)びれし溜息(ためいき)低(ひく)にまよふのみ...
薄田淳介 「白羊宮」
...海の真中からゆらぎ出す潮のように...
ラビンドラナート・タゴール Rabindranath Tagore 宮本百合子訳 「唖娘スバー」
...開いたばかりの葉が作る影のような僅かな光のゆらぎを作り出すことができ...
O. H. ダンバー O. H. Dunbar The Creative CAT 訳 「感覚の殻」
...しかしあのろうそくの炎の不定なゆらぎはあらゆるものの陰影に生きた脈動を与えるので...
寺田寅彦 「映画時代」
...ふるえ、ゆらぎ、はためくすべてのもの、照(て)りわたった夏(なつ)の日、風の夜、流(なが)れる光、星のきらめき、雨風(あめかぜ)、小鳥(ことり)の歌、虫の羽音(はおと)、樹々(きぎ)のそよぎ、好(この)ましい声(こえ)やいとわしい声、ふだん聞(き)きなれている、炉(ろ)の音(おと)、戸の音、夜の静(しず)けさのうちに動脈(どうみゃく)をふくらます血液(けつえき)の音、ありとあらゆるものが、みな音楽(おんがく)である...
ロマン・ローラン 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...この上のゆらぎは来ないだろうと思われるほど...
中里介山 「大菩薩峠」
...余は勾欄から見るのは丁度山車の人形が車の軋るにつれてゆらぎながら進んで行くやうなものだと思つた...
長塚節 「菜の花」
...その自信もゆらぎかける...
久生十蘭 「キャラコさん」
...ニース市を縦に貫く勝利大通り(アカニユ・ド・ラ・ヴィクトワアル)に今年の「謝肉祭の王様(マジェステ・ドュ・キャルナヴァル)」がゆらぎ出したのだ...
久生十蘭 「ノンシャラン道中記」
...神々しい夜だ! 蠱惑的な夜だ! 闇にとざされた森は霊化したもののやうにさゆらぎもせず...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
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山川登美子・増田雅子・與謝野晶子 「恋衣」
...初めて燈火はゆらぎ...
松永延造 「アリア人の孤独」
...今はその命も消えゆく燈火のしづかなゆらぎをしてゐるとは...
水野仙子 「響」
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宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
...たうもろこしはだんだん数を増してもういまは列のやうに崖と線路との間にならび思はずジョバンニが窓から顔を引っ込めて向ふ側の窓を見ましたときは美しいそらの野原の地平線のはてまでその大きなたうもろこしの木がほとんどいちめんに植えられてさやさや風にゆらぎその立派なちゞれた葉のさきからはまるでひるの間にいっぱい日光を吸った金剛石のやうに露がいっぱいについて赤や緑やきらきら燃えて光ってゐるのでした...
宮沢賢治 「〔「銀河鉄道の夜」初期形一〕」
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三好達治 「故郷の花」
...時おりの心のゆらぎを示すものも花や鳥の姿である...
和辻哲郎 「歌集『涌井』を読む」
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