...そこにある広場には欅(けやき)や桜の木がまばらに立っていて...
有島武郎 「或る女」
...固(もと)からの耕地でない証(あかし)には破垣(やれがき)のまばらに残った水田(みずた)を熟(じっ)と闇夜に透かすと...
泉鏡花 「遺稿」
...……つくりものの幽霊を真中(まんなか)に、小按摩と連立って、お桂さんが白木の両ぐりを町に鳴すと、既に、まばらに、消えたのもあり、消えそうなのもある、軒提灯の蔭を、つかず離れず、欣七郎が護(まも)って行(ゆ)く...
泉鏡花 「怨霊借用」
...裏の方は根太板のままでそれに薄縁(うすべり)が処まばらに敷いてあった...
田中貢太郎 「死体の匂い」
...それもまばらに生(は)えた老人が笑ってるのです...
田中貢太郎 「港の妖婦」
...もうその辺(へん)は塀(へい)が生垣(いけがき)になっておりましたので父は生垣のすこしまばらになっている隙間(すきま)から中をのぞいてどういうわけか身うごきもせずにそのままそこをはなれないものでござりますからわたくしも葉と葉のあいだへ顔をあててのぞいてみましたら芝生(しばふ)や築山(つきやま)のあるたいそうな庭に泉水がたたえてありまして...
谷崎潤一郎 「蘆刈」
...まばらに立つた林の中からいくらか午後の日影に照された明るい空を仰ぐやうな形になつた...
田山録弥 「草道」
...木立はいよ/\深くまばらに日の光を漏す處...
永井荷風 「十年振」
...まばらに、低い家がその間から藁屋根(わらやね)を出し...
夏目漱石 「草枕」
...育ちのわるい貧弱なマサキがまばらに立っているだけだが...
久生十蘭 「あなたも私も」
...まばらに灯影(ほかげ)のさしている家々の窓の光りに照らされて...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogolj(Николай Васильевич Гоголь) 平井肇訳 「死せる魂」
...樫の若木の林はやがてまばらになつて...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 後篇」
...左右は草のまばらに生えた空地...
山本周五郎 「青べか物語」
...――そこは赭土(あかつち)に雑草がまばらに枯れているだけで...
山本周五郎 「季節のない街」
...まばらになつてゐて...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...頬髯(ほおひげ)がまばらにのび...
吉川英治 「随筆 宮本武蔵」
...薦僧のまばらに光る白い髯(ひげ)や...
吉川英治 「宮本武蔵」
...みすぼらしい頭髪がまばらにひょろひょろと渦を巻いている...
ルナアル Jules Renard 岸田国士訳 「ぶどう畑のぶどう作り」
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