...男の足をとめた辻には、枝のまばらな、ひょろ長い葉柳(はやなぎ)が一本、このごろはやる疫病(えやみ)にでもかかったかと思う姿で、形(かた)ばかりの影を地の上に落としているが、ここにさえ、その日にかわいた葉を動かそうという風はない...
芥川龍之介 「偸盗」
...月夜のような群青に、秋草を銀で刺繍(ぬいとり)して、ちらちらと黄金(きん)の露を置いた、薄いお太鼓をがっくりとゆるくして、羅(うすもの)の裾を敷いて、乱次(しどけ)なさったら無い風で、美しい足袋跣足(たびはだし)で、そのままスッと、あの別荘の縁を下りて、真直(まっすぐ)に小石の裏庭を突切(つッき)ると、葉のまばらな、花の大きなのが薄化粧して咲きました、」と言う……大輪の雪は、その褄を載せる翼であった...
泉鏡花 「浮舟」
...やがて茶畑を折曲って、小家まばらな、場末の町へ、まだツンとした態度でずんずん入る...
泉鏡花 「婦系図」
...まばらな紅葉林だ...
岩野泡鳴 「泡鳴五部作」
...まばらな鐵柵をめぐらした中に立つてゐる...
岩野泡鳴 「泡鳴五部作」
...まばらな街燈の光も薄暗く...
江戸川乱歩 「悪魔の紋章」
...O町の例の家の側はまばらな竹垣になっていて...
江戸川乱歩 「一寸法師」
...向こうのまばらな森の陰からは枯草(かれぐさ)を燃(も)やす煙(けむり)がところどころにあがった...
田山花袋 「田舎教師」
...左に従い来る山々山骨(さんこつ)黄色く現われてまばらなる小松ちびけたり...
寺田寅彦 「東上記」
...椎の木のまばらな枝葉の間から...
豊島与志雄 「或る日の対話」
...門燈のまばらな薄暗い裏通りを...
豊島与志雄 「女心の強ければ」
...三本のまばらな歯だけが残っている...
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 「城」
...そちらからはただきわめてまばらな拍手の音が起っただけだった...
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 「審判」
...頬や顎(あご)にはまばらな無精髭(ぶしょうひげ)が...
山本周五郎 「青べか物語」
...まばらな葉がみな茶色にちぢれて根じめのつもりだろう...
山本周五郎 「さぶ」
...まばらな髯(ひげ)のなかで...
吉川英治 「三国志」
...陽に焦(や)けた顔にまばらな髯(ひげ)を持って逞(たくま)しい浪人が...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
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若山牧水 「樹木とその葉」
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