...と云うんです……まだ寒いカラッ風の吹く冬の晩のことなんです……で...
大阪圭吉 「あやつり裁判」
...まだ寒い頃だ...
武田麟太郎 「反逆の呂律」
...「見たのだ」「だろう」賢次もにやりとして、「おかっぽれだな」「人間と判っとるなら、おかっぽれかも判らないが、それがへんだよ」「どうしたのだ」「それがおかしいのだ、まだ寒い時、俺(おいら)が今往ってた榎(えのき)の傍を通ってると、二十七八の上品な佳い女が通ってたのだ、夜一人で通ってるから、どこかそのあたりの人だろうと思っていると、鵜(う)を見た日なんだ、くたびれたから、休んでると、へんな奴が二人来て、俺(おいら)を盗人(ぬすっと)が午睡(ひるね)してると云うから、撲(なぐ)りつけて諍闘(けんか)になったところへ、その女が来て仲裁してくれたのだ、それで俺は八幡様を出て来たものの、その女の素性(すじょう)を確めようと思って、引返してみると、女はいないで、諍闘の時にいた社務所の爺さんが、拝殿の横に腰をかけて、仮睡(いねむり)してたから、聞いてみると、あれは水神様だ、人間じゃないと云うのだ、それだよ、夢に出て来たのは」「君んとこは、すこしへんだぜ、蛇が出て来たり、蟻(あり)の塔が出来たり、どうかしてるのじゃないか、神様が出て来て諍闘の仲裁なんかするものか」茶かすつもりであった詞(ことば)の端(はし)に何か神秘的なものがつながった...
田中貢太郎 「春心」
...なんでもないみち・林も春の雨と水音の二重奏・かろいつかれのあしもとのすみれぐさママとよばれつつ蓬摘んでゐる・藁塚ならんでゐる雑草の春あれこれ咲いて桜も咲いてゐる・春はまだ寒い焚火のそばでヨーヨー・みんなかへつてしまつて遠千鳥三月廿七日どうやら霽れさうだ...
種田山頭火 「其中日記」
...・なむからたんのうお仏飯のゆげも・ひとりぐらしも大根きりぼしすることもおもむろに雑魚など焼いてまだ寒いゆふべは窓ちかくきてた(マヽ)えづるや御飯にしよう焼いては食べる雑魚もゆたかなゆふ御飯・蕗のとうが...
種田山頭火 「其中日記」
...まだ寒いので、荻生さんは小使部屋に行ってはよく火を火鉢に入れて持って来た...
田山花袋 「田舎教師」
...まだ寒いころだったわ...
アントン・チェーホフ 神西清訳 「桜の園」
...春と云ってもまだ寒い夜のことで...
豊島与志雄 「阿亀」
...「東京はまだ寒いか...
永井荷風 「新歸朝者日記 拾遺」
...まだまだ寒い国の仲間入りは出来ないわけである...
中谷宇吉郎 「アラスカ通信」
...まだ寒い早春の藪鶯の稚い声をきき...
中谷宇吉郎 「詩人への註文」
...まだ寒い頃の事であったが...
葉山嘉樹 「山谿に生くる人々」
...まだまだ寒いことですが...
原民喜 「書簡」
...今朝もまだ寒い、ズボン下はく...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...ことに復活祭の休みの初めのまだ寒い朝々は...
堀辰雄 「プルウスト雜記」
...「まだ寒いよ...
牧野信一 「或る日の運動」
...春の初めのまだ寒いころで...
柳田国男 「山の人生」
...まだ寒いほどではないのに...
吉川英治 「忘れ残りの記」
便利!手書き漢字入力検索