...殊に半千(きようはんせん)か何かの掛物に太い字のべたべた並んでゐるのは殆ど我々胃病患者に自殺の誘惑を与へる為...
芥川龍之介 「僻見」
...表紙にべたべた絵画を印刷したやうなものは児戯に類する...
高村光太郎 「装幀について」
...と以前はそんなにべたべたしなかつたであらうに...
武田麟太郎 「一の酉」
...こんどはその大火傷に唐辛子をべたべた塗られ...
太宰治 「お伽草紙」
...従って存分に花粉をべたべたと押しつけられる...
寺田寅彦 「沓掛より」
...彼は子供と二人で幾枚かの切手のべたべた貼(は)られた封筒の消印を透かして見た...
徳田秋声 「仮装人物」
...物の湿ることは雨の降る最中(さいちゅう)よりもかえって甚しく机の上はいつも物書く時手をつくあたりのとりわけ湿って露を吹き筆の軸も煙管(きせる)の羅宇(らお)もべたべた粘(ねば)り障子の紙はたるんで隙漏(ひまも)る風に剥(はが)れはせぬかと思われた...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...表(おもて)二階を借りている伊東さんというカフェーの女給(じょきゅう)が襟垢(えりあか)と白粉(おしろい)とでべたべたになった素袷(すあわせ)の寐衣(ねまき)に羽織を引(ひっ)かけ...
永井荷風 「ひかげの花」
...あっちこっちにべたべたと密着(くっつ)いているわい」「そうか」「それにまた一方では...
中里介山 「大菩薩峠」
...べたべたと涙が溢れる...
林芙美子 「新版 放浪記」
...骨が両方の頬っぺたにさわってべたべたに脂だらけになった...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogolj(Николай Васильевич Гоголь) 平井肇訳 「死せる魂」
...血の指紋がべたべた押してあった...
牧逸馬 「女肉を料理する男」
...階段(かいだん)じゅうにチャンというべたべたする薬(くすり)をぬらせておきました...
グリム Grimm 矢崎源九郎訳 「灰かぶり」
...べたべたの手でその肩へ掴(つか)みかかった...
山本周五郎 「百足ちがい」
...べたべた濡れた臓物の中で...
横光利一 「上海」
...そのべたべたと押し重なった鈍重な銅色の体積から奇怪な塔のような気品を彼は感じた...
横光利一 「街の底」
...義士を讃えた歌もべたべたと貼られる...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
...一斉(いっせい)にべたべたと大地へ土下座し始めたので...
吉川英治 「親鸞」
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