...五月といへば、此処(ここ)北海の浦々でさへ、日は暖かに、風も柔らいで、降る雨は春の雨、濡れて喜ぶ燕の歌は聞えずとも、梅桃桜ひと時に、花を被(かづ)かぬ枝もなく、家に居る人も、晴衣して花の下(もと)ゆく子も、おしなべて老も若きも、花の香に酔ひ、人の香に酔ひ、酔心地おぼえぬは無いといふ、天が下の楽しい月と相場が定ツて居るのに、さりとは恁(か)うした日もあるものかと、怪まれる許りな此荒磯の寂寞を、寄せては寄する白浪の、魂の台までも揺がしさうな響きのみが、絶間もなく破ツて居る...
石川啄木 「漂泊」
...五月といへば、此處北海の浦々でさへ、日は暖かに、風も柔らいで、降る雨は春の雨、濡れて喜ぶ燕の歌は聞えずとも、梅桃櫻ひと時に、花を被(お)かぬ枝もなく、家に居る人も、晴衣して花の下行く子も、おしなべて老も若きも、花の香に醉ひ、醉心地おぼえぬは無いといふ、天(あま)が下の樂しい月と相場が定(きま)つて居るのに、さりとは恁(か)うした日もあるものかと、怪まれる許りな此荒磯の寂寞を、寄せては寄する白浪の、魂の臺までも搖がしさうな響きのみが、絶間もなく破つて居る...
石川啄木 「漂泊」
...このひと時……幸...
ポオル・クロオデル Paul Claudel 上田敏訳 「カンタタ」
...愛とはなんであるかを思い知った最初のあの幸福だった日からこのかた、私はすっかり希望と嫉妬の俘(とりこ)となって、一日として、ひと時として、それから解放されたことはございません...
リットン・ストレチー Lytton Strachey 片岡鉄兵訳 「エリザベスとエセックス」
...キャバレー・ルビーの夜のひと時...
豊島与志雄 「蛸の如きもの」
...じっとそのままひと時ほど黙っていた...
中島敦 「悟浄出世」
...駅員はその傍に立って、ひと時、顔を見ていたが、いかにも異様なので、そっと手に触ってみると、氷のように冷たくなっている...
久生十蘭 「悪の花束」
...もうひと時も私を離したくないふうでして...
久生十蘭 「雲の小径」
...いやというほど水を飲み、化けそこなった水の精のように、髪から滴(しずく)をたらしながら岸に這いあがると、気ぬけがして、ひと時、茫然と草の中に坐っていた...
久生十蘭 「肌色の月」
...ひと時の寂寞...
逸見猶吉 「逸見猶吉詩集」
...このひと時の己の愛だ...
逸見猶吉 「逸見猶吉詩集」
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正岡子規 「古池の句の弁」
...秘密の花弁につつまれたあるひと時の私の純潔...
三好達治 「測量船」
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三好達治 「南窗集」
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三好達治 「故郷の花」
...ひと時は榮ゆといへども...
森鴎外 「柵草紙の山房論文」
...静かな静かなそのひと時だった...
横光利一 「旅愁」
...ほんのひと時であろうと...
H. P. ラヴクラフト H.P.Lovecraft The Creative CAT 訳 「狂気の山脈にて」
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