...五月といへば、此処(ここ)北海の浦々でさへ、日は暖かに、風も柔らいで、降る雨は春の雨、濡れて喜ぶ燕の歌は聞えずとも、梅桃桜ひと時に、花を被(かづ)かぬ枝もなく、家に居る人も、晴衣して花の下(もと)ゆく子も、おしなべて老も若きも、花の香に酔ひ、人の香に酔ひ、酔心地おぼえぬは無いといふ、天が下の楽しい月と相場が定ツて居るのに、さりとは恁(か)うした日もあるものかと、怪まれる許りな此荒磯の寂寞を、寄せては寄する白浪の、魂の台までも揺がしさうな響きのみが、絶間もなく破ツて居る...
石川啄木 「漂泊」
...唯(たゞ)ひとつ終なきもの、春と夏とのさかひ、今ひと時...
ポオル・クロオデル Paul Claudel 上田敏訳 「カンタタ」
...露の世に Dans un monde de roseぼたんの花の下で Sous la fleur de pivoineお目にかかったひと時(意訳) rencontre d'un instant.ポール・ルイ・クウシュウ Paul Louis Couchoudというのでございました...
高浜虚子 「俳句への道」
...ひと時の隙間なのだ...
豊島与志雄 「傷痕の背景」
...この子がほんのひと時でも私から父の愛を受けて悦んでくれたら……...
永井隆 「この子を残して」
...駅員はその傍に立って、ひと時、顔を見ていたが、いかにも異様なので、そっと手に触ってみると、氷のように冷たくなっている...
久生十蘭 「悪の花束」
...ひと時も保合(もちあ)えぬようなところにまで迫ってきた...
久生十蘭 「ボニン島物語」
...「清兵衛さん、すると、ずっとその島のイギリス人どもといっしょにいたわけなのかい」清兵衛は、なぜか急に狼狽して、「異人といっしょに居りましたのは、ほんのひと時で、間もなく、私らだけで、ほかの島に移りました」清兵衛らの移ったのは、ペール島の北にある、周り十里ほどの島で地味が肥え、黒土が六尺もあって、なにによらず、蒔いてものの成らぬということはない...
久生十蘭 「ボニン島物語」
...ひと時の寂寞...
逸見猶吉 「逸見猶吉詩集」
...このひと時の己の愛だ...
逸見猶吉 「逸見猶吉詩集」
...人氣のない牧場をひと時疾驅したおかげで...
堀辰雄 「春日遲々」
......
正岡子規 「古池の句の弁」
...秘密の花弁につつまれたあるひと時の私の純潔...
三好達治 「測量船」
...静かな静かなそのひと時だった...
横光利一 「旅愁」
...ひと時の旅路をふり返る余裕も出来て来るのだった...
横光利一 「旅愁」
...青味を帯びしひと時を...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集」
...春と夏との入りかはるこのひと時のめでたさよ...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集拾遺」
...このひと時に若返る...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集拾遺」
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