...一年(ひととせ)思いたつよしして...
泉鏡花 「伊勢之巻」
...ひととせなりき、春日(かすが)の宮の使ひ姫秋ふた毛して、竹柏(なぎ)の木(こ)の間をゆきかへる小春日和を、都ほとりの秋篠(あきしの)や、「香(かぐ)の清水」は水錆(みさ)びてし古き御寺の頽廢堂(あばらすだう)の奧ぶかに、技藝天女の御像(みすがた)の天つ大御身(おほみま)、玉としにほふおもざしに、美(うま)し御國の常世邊(とこよべ)ぞあくがれ入りし歸るさを、ふとこそ、荒れし夕庭の朽木の枝に、汝(な)が靜歌を聞きすまし、心あがりのわが絃(いと)に、然(さ)は緒合(をあは)せにゆらぐ音の歌ぬしこそは、うべ睦魂(むつだま)の友としも、おもひそめしか...
薄田泣菫 「泣菫詩抄」
...ひととせなりき、春日(かすが)の宮(みや)の使(つか)ひ姫(ひめ)、秋(あき)ふた毛(げ)して、竹柏(なぎ)の木(こ)の間(ま)をゆきかへる小春日和(こはるびより)を、都(みやこ)ほとりの秋篠(あきしの)や、*『香(かぐ)の清水(しみづ)』は水錆(みさ)びてし古(ふる)き御寺(みてら)の頽廢堂(あばらすだう)の奧(おく)ぶかに、技藝天女(ぎげいてんによ)の御像(みすがた)の天(あま)つ大御身(おほみま)、玉(たま)としにほふおもざしに、美(うま)し御國(みくに)の常世邊(とこよべ)ぞあくがれ入(い)りし歸(かへ)るさを、ふとこそ、荒(あ)れし夕庭(ゆふには)の朽木(くちき)の枝(えだ)に、汝(な)が靜歌(しづうた)を聞(き)きすまし、心(こゝろ)あがりのわが絃(いと)に、然(さ)は緒合(をあは)せにゆらぐ音(ね)の歌(うた)ぬしこそは、うべ睦魂(むつだま)の友(とも)としも、おもひそめしか...
薄田淳介 「白羊宮」
...まだ一年(ひととせ)の來(こ)ぬ夢なれば...
高山樗牛 「瀧口入道」
...ひととせ大病にかかつて...
太宰治 「魚服記に就て」
...ひととせに...
太宰治 「盲人独笑」
...ひととせ上方見物に来て祇園(ぎおん)の茶屋で舞妓(まいこ)の舞いを見た折のこと...
谷崎潤一郎 「蓼喰う虫」
...松原遠く日は暮れて利根のながれのゆるやかにながめ淋しき村里のここに一年(ひととせ)かりの庵(いお)はかなき恋も世も捨てて願ひもなくてただ一人さびしく歌ふわがうたをあはれと聞かんすべもがなかれは時々こうしたセンチメンタルな心になったが...
田山花袋 「田舎教師」
...六十路(むそぢ)あまり一年(ひととせ)の御顔(みかお)に寄する年の波...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...色変はる秋の菊(きく)をば一年(ひととせ)にふたゝび匂(にほ)ふ花(はな)とこそ見(み)れ第二十四章 全力と余裕蛙(かえる)の筋肉の力を測(はか)りし学者の試験かつてベルリンに在学のころヘルムホルツ博士の名が世界にひろく轟(とどろ)いているので...
新渡戸稲造 「自警録」
...一年(ひととせ)村の祭礼の折とかや...
福田英子 「妾の半生涯」
...――――――――――一年(ひととせ)前の...
牧野信一 「青白き公園」
...遮莫(さわれ)、その小亀一座にはがんもどきと仇名打たれし老爺あり、顔一面の大あばた、上州訛りの吃々(きつきつ)と不器用すぎておかしかりしが、ひととせ、このがんもどき、小亀社中と晩春早夏の花川戸東橋亭の昼席――一人高座の百面相に、その頃巷間の噂となりし小名木川の首無し事件を演じたりけり...
正岡容 「随筆 寄席風俗」
...『古今集』開巻第一に年の内に春は来にけり一年(ひととせ)を去年(こぞ)とやいはむ今年とやいはむとあるもこの事なり...
正岡子規 「墨汁一滴」
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山川登美子・増田雅子・與謝野晶子 「恋衣」
...一歳(ひととせ)欧州に遊歴せしに...
三宅花圃 「藪の鶯」
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三好達治 「駱駝の瘤にまたがつて」
...まだ潮音と一年(ひととせ)ぶりの想いを果しただけで...
吉川英治 「源頼朝」
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