...熱帯の森林を失った蜥蜴や蛇の標本は妙にはかなさを漂(ただよ)わせている...
芥川龍之介 「早春」
...夢中にも薬の名の出づるは多少のはかなさを感ぜざる能(あた)はず...
芥川龍之介 「病中雑記」
...君は人間の運命のはかなさと美しさとに同時に胸をしめ上げられる...
有島武郎 「生まれいずる悩み」
...私達の思考力のはかなさを暴露するようなものであろうけれども...
有島武郎 「惜みなく愛は奪う」
...役者(やくしや)の群(むれ)をはぐれたる子供心(ごゝろ)のはかなさは‥‥‥うちの裏(うら)のちさの木に雀(すゞめ)が三羽とうまつて一羽の雀がいふことにやゆうべござつた花嫁御(はなよめご)なにがかなしゆてお泣きやるぞおなきやるぞ‥‥‥ゆうべの芝居のその唄(うた)がいまのわが身につまされてほろりほろりとないてゆく...
竹久夢二 「どんたく」
...痴情のはかなさを...
田澤稲舟 「五大堂」
...酔ざめのはかなさ...
種田山頭火 「松山日記」
...その嬉しさに伴う一種のはかなさとを感じた...
夏目漱石 「行人」
...なんともいえないはかなさがあった...
久生十蘭 「キャラコさん」
...人生のはかなさを実証したことに最近逢(あ)った自分は...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...この家(うち)は人生のはかなさをいろいろにして私へ思い知らせ...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...翳に埋れ翳に支へられその階段はどこへ果ててゐるのかはかなさに立ちあがりいくたび踏んでみたことだらうものいはず濡れた肩や失はれたいのちの群をこえけんめいにあふれる時間をたどりたかつたあてもない歩みの遅速のままにどぶどろの秩序をすぎもはや美しいままに欺かれうつくしいままに奪はれてゐたしかし最後の膝に耐えこみあげる背をふせはげしく若さをうちくだいて未完の忘却のなかからなほ何かを信じようとしてゐた...
森川義信 「衢にて」
...栄華(えいが)のはかなさ...
吉川英治 「新書太閤記」
...末のはかなさを考えたりして...
吉川英治 「親鸞」
...堅い腰掛けの上で痛む肩や背や腰を自分でどうにもできないはかなさのため...
和辻哲郎 「停車場で感じたこと」
...ますますはかなさがつのってくる...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
...従って彼は人性の奥底に「女々(めめ)しきはかなさ」をさえも見いだすに至った...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
...我々は彼らの製作に横溢するあのはかなさ...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
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